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2017.01.24

【芝居】「フォトジェニック」鵺的

2017.1.14 14:30 [CoRich]

フライヤの多彩さも評判の企画公演105分。梟門。カメラマン役を演じた橋本恵一郎による写真展も予定されています。

カメラマンの男。仕事とは別に若い女性を誘いその死に際を撮影するライフワークを続けている。捕まってもいいと思っているが、殺したのは四人なのに、同じ手口でもう一人が殺されていることに不審を抱きモデルとして所属していたスタジオを突き止めるが、撮影された写真がどこにも出ていない。スタジオを借りさらなる調査を進める。

四人の女優の写真が横に並び、その前に椅子というシンプルかつスタイリッシュな舞台。町の人々のような他の役を兼ねることはあるけれど基本的にはスタジオの経営者、二人のモデル、専属のカメラマンを主に演じます。 そのスタジオを探る男のカメラマンは死に際を撮影するライフワークという癖のある人物が語る、という体裁。 それ以外に、殺された女たちであったり手がかりとなるライターなどを映像という形で挟んで物語を進めます。

序盤こそ生の舞台の流れが断ち切られるような感じもあって違和感がありますが、語り口がそう変わらないよう丁寧に作り込まれた映像は時折意図的に組み込まれた違和感もあったりして一体として世界を作り出すのです。

舞台に登場しない「殺された女」を追い求める物語はスタジオの四人の人物と関係をあぶり出します。モデルというある種「女を売る」仕事であったり、サイコパスのように偏った感覚だったり、あるいは恋人であること、利害関係などが渦巻く世界が徐々にかいま見えた先にあるのはオカルトでホラーなこと。居ないはずの人物が登場することで息を呑むような恐怖を生むのです。正直にいえば、このオカルト要素のおかげで何でもありになってしまうところはあるけれど、メモリもクラウドも人質にされて斜に構えたカメラマンが本気で怒ることだったり、人々の物語をもう一度駆動する力強さ。

物語の合間に動画を挟む手法は決して斬新というわけではないし好みが別れるような気もします。殺人の現場の切迫感やオカルトライターのインタビューでのちょっとのんびりした感じなど、舞台とは異なる雰囲気のシーンを挟んでリズムを作ることに成功しています。 ネタバレかも

殺された女が幼い頃に亡くした妹が物語の焦点になりあmす。両親の虐待で亡くなった妹の復活を信じ崇拝し、そのための道具立てとして周りの人々を巻き込んでいた女。自分の死をもってして妹が復活した、と信じているけれど、妹は姉の意思とは全く関係なく、別の殺された妊婦の腹を内側から切り裂いて出てくるという猟奇的な復活を遂げるのです。サイコパスを大きく超えた化け物、として描画される妹の存在がこの物語の頂点を形作るのです。

妹を演じるのは周到に準備された6人目の「隠された」出演者。少数だけ配られたという手だけのアップというフライヤーや劇中の動画に現れる女だったり、それを出演者も観客もグルになり千秋楽まで守りきる心意気と、Twitter劇団アカウントで千秋楽後にフライヤーや宣伝にまつわる種明かしをし、さらに写真展に繋げるという一連のつながりが実に巧いのです。演じた福永マリカはサイコパスに振り切った瞬発力はさすが。終幕の新たな序章でのある種のかわいらしささえまた恐怖なのです。

死んだ女が見えるモデルを演じた奥野亮子はメンヘラといううすっぺらになりがちな役に厚みを。経営者を演じた小崎愛美理はボーイッシュな髪型に他の女が惚れるというタチな雰囲気でホルモンがめいっぱい。おびえるカメラマンを演じた川添美和はその抑圧された感じが新たな魅力。別役で現れる町の人の軽い会話の表情との振り幅が楽しい。フライヤーの写真も撮影しカメラマンを演じた橋本恵一郎はフラットで少々いけ好かないテンションをずっと維持するというのは実はとてもすごいこと何じゃないかと思ったり。もう一人のモデルを演じた堤千穂は唯一このコミュニティの中で「巻き込まれていない」人物という立ち位置をしっかりと軽薄な人物造形もギョウカイっぽさを醸し出します。

四人の女たち、堤千穂だけがすこし距離があって物語に貢献しないが、フラットな立ち位置。 おびえる川添、気弱で死にたい奥野、ボーイッシュで実は男で強気なサイコパス、小崎。どこまでもフラットで感情のない橋本。  ←「作品」のメモリを消され、クラウドのパスワードも奪われて怒る ラスボス的に現れる妹はキャスト表にない、実在する?、ではなくまあ驚きだけか。サイコパスとしてはさらに強い印象を。 写真展を後に開催する周到さ。 オカルトめいたことがおこる、ということだけでは何でもありになってしまう。対決姿勢のカメラマンの存在が物語を牽引するが、それは実際のところ背景をの説明であってここまでではあまりうまくないつくりになっているけれど、、そのオカルトめいた人々のある種の苦闘の最後のシーンが人の物語になっている。 映像が数多く使われるのはまあどうなんだろう。たくさんの女優が観られてうれしいか。そうか。

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