【芝居】「音楽劇 アラビアンナイト」たちかわ創造舎
2017.1.20 16:00 [CoRich]
たちかわ創造舎による立川シアタープロジェクトの第一弾。 子供も大人も楽しめる、という80分。昨年末の立川公演を経て22日まで吉祥寺シアター。
女は毎夜、王様のもとで夜伽話を続ける。
三人娘が営む宿屋に身分を隠した王と片目の男が泊まる。片目の男は自分の身の上話をする。三人の兄弟の長男だった男、かつて一人の女を娶ろうと兄弟は宝物を探す旅に出たが三人の宝物全てが揃うことでしか女は救えず結局長男は身を引き旅に出る。乗っていた船は難破し無人島に打ち上げられるが、そこで地下室に閉じ込められた少年を見つける。少年はある男によって殺されるという予言から逃れるためにここに隠れているが、その名前は自分のことだった。名前を隠して一緒に暮らすことにする。
真鍮の柱のそばに暮らす人々は大きな鳥によって天女の住む宮殿に運ばれるが、40日の楽しい日々はあっという間に過ぎ、女たちはしばらくここを離れ、その間に100ある部屋の最後の一つだけは開けてはいけないという約束をするが。
翌日のおとぎ話。二人の兄弟、兄は金持ちの女を娶り、弟アリババは貧しい女を娶る。偶然アリババは盗賊の隠し財宝を見つけるが、それに気付いた兄は財宝を手に入れようとして盗賊に殺されてしまう。女盗賊の手助けで兄の葬儀を人並みに出すことができたが、財宝を狙う仲間がいないかと盗賊たちの手はアリババにおよぶ。再び女盗賊が活躍する。
ベッドの形の巨大な舞台、その下や後ろ側から出入りする役者たちに、舞台端にはパーカッションなどの演奏ブース。ダンスや大げさな動きを交えながらの舞台。当日パンフによれば、 「空飛ぶ絨毯」「星のさだめ」「アリババと四十人の盗賊」を軸に、「船乗りシンドバッド」「アラジンと魔法のランプ」「黒壇の馬」「ものいう鳥」を交えたものがたりはおとぎ話とはいえ、相当に濃密で、そしてダークな仕上がりなのです。
二晩の夜伽話、一晩めは片眼の男をめぐる冒険譚。空飛ぶ魔法の絨毯やダイアモンドの谷、あるいはシンドバットよろしくの大冒険だったり、約束を守れなかったがための罰など相当に盛りだくさんだけれど、基本的には子供向けのおとぎ話というテイストをそう大きくは崩しません。二番目は盗賊とアリババの物語に影となって活躍する女奴隷の物語。こちらは相当にダークな仕上がりです。切り刻まれた兄の葬式を出すために革靴職人に塗って貰ったり、そこから秘密が漏れて襲ってくる盗賊たちが身を隠す瓶に熱した油を注いで静かに殺すとか、相当にえげつなくてダークです。女奴隷にいわゆる汚れ仕事をさせ、徐々に身分を引き上げていく、というのも少なくともイマドキな話ではなくて、なかなかテレビなどではやらないタイプの物語になっています。
後半の物語に現れる王の結婚式は前半の物語の宿屋の三姉妹にゆるやかにリンクし、後半の物語の女奴隷は今やこの夜伽話を続けている女にリンクする、と綺麗に物語がつながります。
こどもたちの、というわりに平日16時はさすがに子供はほとんど居ない感じだし、開場中に観客に作らせた星形のスティックの活躍がわりと後半の一瞬なのは勿体ない気はします。それでも20分程度に一度は客席側に役者が出てくるような「しかけ」を用意し観客を巧く巻き込もうという企みは成功しています。
観客を夜伽話を聞く王に喩え、役者たちは「毎晩面白い話ができたら生きながらえる」夜伽話の語り手、という構図を終幕に。観客=王に面白いと思って貰えばお慰み、役者たちは明日も存在できるのだ、という形を創り出しているのは巧くて、シェイクスピア・夏の夜の夢の終幕での妖精パックのような余韻を残します。
前半の王を演じる村上哲也のどこか優しい感じ、夜伽の女と後半の女奴隷を演じる平佐喜子の凛とした強さ、さまざまな役を自在にこなす小林至や竹原千恵の柔軟さ、片眼の男や盗賊を演じる榊原毅の絶対的に感じる強さ、占い師などを演じる藤谷みきの器用さ。たちかわ創造舎という場が創り出す芝居へのこれからの期待も高まるのです。
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