【芝居】「ゆっくり回る菊池」僕たちが好きだった川村紗也
2016.11.23 19:00 [CoRich]
川村紗也が主宰するユニットの第2回公演、90分。クロムモリブデンの青木秀樹が外部に書き下ろすことも珍しい。27日までアゴラ劇場。
彼氏が女の家に戻ってきて、酔って人を殺したのだという。かつて痴漢に遭った女を助けたことでつきあい始めた二人で、男が殺したのはその痴漢の犯人として突き出した男だったという。同居している女の姉はつきあい始めた男が居て、事件が表にでるのはなんとしても止めたい。男が一緒に呑んでいたという友人を犯人に仕立てようと電話で本人にそう伝えると、あっさりそれを受け入れ、殺された男の家族に謝りに行くという。
犯人となった男は殺した男の家を訪れて謝罪しようとするが、妻はそれを咎めず、使用人としてここで暮らすように言う。そこに、死んだはずの男が戻ってくるが記憶はない。
平穏に戻ったかに見えた姉妹の家、そこに脅迫状が届く。
心にあるやましさや、人には言いづらい価値観が、少々いびつな形で表出するのがアタシの思うクロムっぽさのひとつ。元クロムモリブデンの幸田尚子を明確にかき回すポジションに据えたとはいえ、基本的には劇団の役者には頼らず作り出すクロモリ風味の世界。 夫を殺したいと思っている妻だったり、覚えのない殺人犯のぬれぎぬをあっさりと受け入れて、さらに奴隷同然の扱いを受けてなお心の平穏があることだったり、痴漢を巡る冤罪とそれを引き起こす打算など、などが整理されて徐々に明らかになります。正直にいえば、詰め込み過ぎぐらいの要素があって、物語を負うよりは、いろんな(アタシにとっては)おかしな人々を眺めるような距離感の方がワタシは観やすい芝居でした。
物語の構造としては殺された男が理不尽をすべて引き受けている感じであまりに都合のいい存在だけれど、それもあっさり「(いろいろ)こけたから」というだけのしょうもない理由で受け流している軽い人物の造形とあいまってあまり気にならず、うまい方向に働いているように思います。
全体に癖のある、あるいは癖を作り出せる役者陣の中にあって、主宰で妹役を演じた川村紗也は見かけどころか終幕で心の闇を吐露してもなお可愛いらしく見えてしまうのはご愛敬だけれどしっかりと食いつき走りきります。枝元萌をここまでコミカルで自己中なキャラで見るのは初めてかもしれないけれど、やけに説得力。妻を演じた幸田尚子は出落ちかと思うほどキチガイキャラを炸裂させきっちり和服で電動丸鋸をー振り回すという前代未聞。(でも美しいってどうなの)
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