【芝居】「そろそろ愉快になろうと思う」ローカルトークス
2016.11.19 19:30 [CoRich]
(劇団)ブラジルの、というよりはアタシにとっては圧倒的に本数が少ないはずなのに元・クロム舎の、という印象がなぜか強い西山聡のユニットの新作、120分。シアターシャイン。
妻に先立たれ4年、娘が引きこもった男。2ヶ月経っても原因の究明も変化の兆しがない。男は妻の兄弟たちに相談する、出された結論は、あまりに生真面目で堅物な喋り方では、娘の心には寄り添えない、その人柄や喋り方を改善しないと事態は変わらない、ということだった。妻の弟は元はテレビで通販もやっていた口八丁の店頭販売員、妻の妹は妊娠を望んでいるが授かれないままでいる。
当日パンフによれば、子供ができたからという作家の背景が書かせた物語のよう。父ひとり子ひとりで育った娘の引きこもり、生真面目で不器用にしか対処できない父親。母親と娘は実際には出演させないことで、妻亡きあと、娘を養っているとはいえ独りで走り続けてきた男にスポットライトを当てるよう。それではたち行かなくなって、相談しようという決心。
生真面目に至った詳細が語られるわけではありません。それでも他の人との会話を聞くうち、きっと彼はこう考えて、相談するに至ったのだろうなということが腑に落ちるよう。それは他の人物についても同じで、妊娠についての夫婦のすれ違う気持ち、上手に生きてきたはずだけどいい歳にもなってどうしたもんだかなな気持ちを抱えているなど、それぞれの人物が徐々に浮かび上がる細やかさが楽しいアタシです。
物語は基本的にはドタバタなコメディの調子で語られます。駄洒落も軽口もたたけない男と口八丁な販売員というチラシにある二人を物語の核にしますが、実際のところ、人物として苦手だということはあっても、物語の大筋にはあまり対立軸がなくて一つの目標に向かっているという大枠と、それぞれの人物の悩みが周りを回っている、という構造になっています。
生真面目な男を演じた村上航は見慣れた俳優ですが、ここまでがっつりと、わざとふざけることをしないというメインの役は初めてな気がします。圧巻なのは不器用な笑顔のぎこちなさ、終幕が幸せにみえるのもいい。 口八丁な男を演じた服部ひろとしは意外なほど販売の口上が似合って、序盤を引っ張っていて新しい魅力。妊活にいそしむ女を演じた黒岩三佳、人当たりもいいけれど、人知れず悩みつづけ、その結果引きこもりの姪っ子に傾倒するという細やかで、やや病んだバランス。ヤンキーだけれどオジサンに恋する女を演じた村上亜利沙、一度引っ込んでからサザエさんのようにおちょぼに口紅という雑な感じもいいし、それを笑いにしないのも作家の優しさ、そこの中で行きる可愛らしさ。
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コメント
どうも、前回も今回も舞台でお会いしますね。
いつも感想をありがとうございます。
何だか仕事で起きておりまして、、、お礼を言いたくて、失礼します。
西山さんは、この2作品で大きな成長というか、何か化けた気がします、
これを何か、、マネーに変えれたら、、と、、、今になって悔しい思いがあります。
また次回見たいなー。。。でも本当にこれいきなり鈴なりとかでもいいのにね。。
とこの演劇界への思いを書いてみます
投稿: 元クロム舎清水 | 2016.12.17 05:00