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2016.12.28

【芝居】「組曲『遭遇』」空想組曲

2016.12.11 18:30 [CoRich]

2008年作の劇中劇を再構成。 10本を超える短編からきっちりと編み上げる120分。14日までサンモールスタジオ。

星を見上げているとUFOが落ちて、宇宙人が現れる「未知との遭遇#1〜#4」
猫を殺された友達を元気づけたい、再生させたい「メモリアルブルー」
作家と妻、迷走していて、オビに合わせて小説を作ったり、改訂してる。自信がなくなってる。おもしろいと云ってくれた最初の読者が居なくなって「作家が目指した銀河の果て」
今週食事に誘ってくれた男のところへ行きたい、でも終電はとっくになく、タクシーはもったいない。悪魔のような羽根でもいい。 「翼をよこせ」
イヤなことがあってもあの人は撃ってくれる 「ありがちベリー」(日替わり演目)
学校で男たちがみんな告白してくる、娘を亡くした母親が「ジュンコに捧げる愛の歌」
友達は居ない。母親の虐待、弟は空が青いといって逆鱗に触れてベランダに出されて死んだのに、僕は何も出来なかった「僕と君との二人芝居」
流星というリンゴを取って、かじって王子様が来たり、ゲストにも王子様が来たり、もう一回リンゴを採ってかじったけれど、誰も来ない。待って、探してみる「スノーホワイト・ランデブー」
エイリアン、腹から生物が食い破って、という手、という競技「さぁ、手をつなごう。」
クイズ、作家二人がシチュエーションを作る「フィクショニア」

マンガ原作やイケメン芝居など、大きな劇場外部での作演が増えてきた作家の舞台を拝見するのはずいぶん久しぶり。それぞれにフィールドを広げる小劇場の役者たちと作り上げる小さな空間での短編集の濃密さ。

思い悩む少年と宇宙人の出会いをきっかけに、おそらくは少年が好きな少女から笑顔が消えた理由、その犯人の物語を全体の背骨に据えます。 それ以外にも、妻を亡くした作家、娘を亡くした母親の話だったり、終電を逃した女のファンタジー、流星をとらえた女だったり、腹から生物出てくるエイリアンとのペア競技(作り物感が、一時期動画で人気だったスキージャンプ・ペアのよう)など、ときに出落ちたり、ときにしんみりだったり、というバラエティあふれるごく多くの短編をつないでいきます。

終幕近くになった「フィクショニア」はクイズ仕立てで作家となった二人の背景を描き出します。ひとつは猫を殺された少女のその後であり、ひとつは猫を殺した男のその後。するすると物語を紡ぎつなぎ合わせてこのたくさんの物語を一つにまとめていくのです。それはまるで一冊の本に綴じ合わせるよう。

「作家を〜」は自信なくしたが為にオビに合わせて小説を買くというツカミが楽しく、しかし第一の読者を失った男の悲哀と次への一歩が力強い。作家を演じた久保貫太郎は軽やかでコミカルでペーソスも滲む味わい。

「翼を〜」は終電がなくなるその時間まで食事にも誘えなかった引っ込み思案な恋心にタクシー代は出せない切実さが親しみやすくかわいらしい女の姿。演じる岡田アガサは切れッキレの芝居なのに演じてるのはあくまで可愛らしい女の子像なのがちょっとすごい。惚れてしまいそう。起こる奇跡もうれしい。

「ジュンコに〜」は若くはない女優にセーラ服の出落ち感を逆手にとって、そうなった悲惨な背景を描き出すワンアイディアの妙でやけに見せる感じ。 「フィクショニア」はクイズ番組という、ありがちといえばありがちな形式だけれど、高いテンションと裏腹に場を制圧するようなある種の威厳というMCを演じた中田顕史郎の確かな力。

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