【芝居】「ミカエル」MCR
2016.12.11 15:00 [CoRich]
13日まで駅前劇場。95分。
差出人不明の小包が届き、ガス爆発が起きて男は記憶を無くしているという。不自由なく暮らしていたがベッドは別で離婚が間近だった妻は、これを機会に前に同棲していた小さな部屋で暮らしていた幸せだったあの時を呼び戻そうとする。
その前に彼女だった女は酷い別れ方をしたのか男を許す気はない。そのときの男友達は詳しくは知らないけれど、あれだけ怒ってるのだから酷いことをしたんだろうと思っている。
記憶を無くしたという男を特異点にして、妻と元カノという二人の物語を広げつつ、狭い範囲の友人関係を足がかりにして物語を進めます。元カノは酷い別れ方と主張しているけれど聞いてみればそうでもなく、きちんと真面目に働き、時間を積み重ねてきたのに、妻はその生活に不満があってということが徐々に見えてくるのです。いわゆるSFではないけれど、周りの人を巻き込んで時間をあの時に巻き戻すよう。
もう一つ、喫茶店で語られる若い世代の恋物語。告白したい女と幼なじみのヤンキー風の女友達。男は誠実そうだけれど、処女かどうかという拘りどころのすれ違いでヤンキー女が惚れ恋人になっていくのは、もう一つ小さな男一人と女二人の三角関係を作るのは相似形のようなのです。
喫茶店の男を演じた澤唯は静かに見守る男、しかしバイトに来ている女への好意をここまで積み重ねて来たのに、あっさり時間が戻される無力感、それまでの客のめんどくささも含めて溜まりに溜まったストレスでちょっと椅子を蹴飛ばすシーンの静かな爆発の精度。しかし女が戻ってくる終幕が嬉しい。元カノかつバイトの女を演じた後藤飛鳥、好きすぎる気持ちのぐるぐる。妻を演じた外村道子は美しくシュッとした雰囲気。この二人の対峙する終幕の緊張感もいい。
特異点の男を演じた川島潤哉、基本的には誠実な男の造形だけで走りきります。酷いことをした回想を具体的には描かないのは巧くて、元カノ側が感じていた酷さはそうでもないということでもあるし、記憶を実は無くしてないということの担保だったりも感じるのです。
記憶を無くしてないのに、無くしたふり、というのはある種のイタズラ心の発露。友達の履歴書を勝手にアルカイダに送る、というのはイタズラとしては相当に秀逸というかひどいけれど、ちょっと凄い発想だと思うのです。
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