【芝居】「Dressing」fablaboプロデュース
2016.12.18 18:00 [CoRich]
2011年5月にエビス駅前バーで上演された作品(未見)に、続編となる「Dressing Up!」を追加して交互上演。19日までシアターミラクル。60分。
震災で店が被害を受けて、小さなバーを借りて臨時営業しているガールズバーの回転前。六本木・銀座などでホステスをしていた女が新しくスタッフとして加わる。実は伝説のホステスを追い、この町にいることを突き止めたのだ。学生や美容師の夜のアルバイト、ほわんとした雰囲気なのにナンバーワン、動画サイトやケータイ小説で人気のアニメ声などさまざまなスタッフを束ねるのが、女性のバーテンダーと家庭料理を出すママだった。
若い学生のアルバイトから社会人副業、水商売で生きていく女、あるいは夫あり子持ちでホステスからは卒業した女、おそらくは同じような道を辿ってきたママ。女の生きざまあれこれをショーケース。少年ジャンプのような熱さだったり、男の取り合いだったり、あっさりのナンバーワンなどいろんな属性をそれぞれに組み合わせることで短い上演時間のなかに濃密なそれぞれの人物を立ち上げるのは作家の確かな力。
青山四大と短大の確執と男の取り合いだったり、何でも器用にこなす女が煙草を止められてるのに止めないちょっと世間をなめてる感じだったり、あるいは女にモテる女の颯爽とした感じ。ほわんとして見えてナンバーワンなりの努力。感情労働といわれる水商売をそれでも日々乗りこなす女たち。
探されていた伝説のホステスが実は店を実質的にコントロールするバーテンダーで、尾ひれがついた武勇伝だけれど、枕営業も泡姫までもは真実で、それが「落ちていく」からではなく、単にセックスが好きだったというあけすけな感じはちょっと面白い。彼女に限らず、水商売や風俗を後ろ暗い商売と考える向きもあるけれど、今作では全ての登場人物が前向きに捕らえている、というのがこの物語をパワーを生み出しています。
伝説のホステスを探す新人を演じた川島佳帆里はそれこそ少年ジャンプのようなパワフルさで序盤を引っ張ります。役そのものでは無いけれど、スタイルの良さに目が泳いでしまうアタシです。バーテンダーを演じた加藤なぎさはずっと見つめる大人とその裏側の壮絶な厚みをもった役をしっかり。ママを演じた中谷真由美はコミカルに引っ張るけれど、肩の力が抜けた感じが、この店にスタッフが居着く雰囲気を創り出します。
ミラクルではめずらしくしっかりとしたセット。雰囲気あるバーカウンター。エビス駅前バーがリニューアルして今までのような演劇公演ができるかどうか怪しい昨今、扉の位置関係などこそ異なるけれど、このセットを使い回してあの場所ゆえに創り出され上演された名作の数々をアーカイブ的に再演できそう。
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