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2016.12.29

【芝居】「車窓から、世界の」iaku

2016.12.17 14:00 [CoRich]

2014年に兵庫県立ピッコロ劇団によって上演された作品を劇団として上演。兵庫からこまばアゴラ劇場、1月に三重。 90分。

住民の陳情で作られた駅のホーム。急行は止まらず駅前の開発も進まず乗客の多くは急行停車駅を利用していて、利用が伸びない。女子中学生三人が飛び込み自殺を図り二人は亡くなり一人は重傷で意識が戻らないまま二週間が経った。三人が通う中学はそれぞれ別だが、三人が所属していたガールスカウト団体が亡くなった二人のために「お別れの会」が企画された。
それに出席するために少女が通うクラスの副担任とその恋人、PTAの副会長、ガールスカウト団体のスタッフの三人の女が駅のホームで電車を待っているが、運転見合わせになっており電車は来ない。雨降りしきる中ホームの端で傘も差さずにずっと動かない男が居る。その場所は少女たちが飛び降りたその場所だ。

アゴラ劇場を幅広の横使いにして、小さな私鉄駅のホームという風情の舞台。自殺した女子生徒のことを思う大人たちの会話劇。現在の表の顔を知る学校の教師とPTAの副会長、三人が共通の知り合いだった子供の頃をしるガールスカウトのスタッフという三人の喪服姿の女たち。漫画や同人誌好きという、女子生徒たちのもう一つの顔と、その核となっていた男。

漫画描きと大人になりかけた少女たち、ゲスな関係と考えられがちな彼らを単純に断ずることはなく、ある種の気持ち悪さは認めた上で、漫画描きも含めた四人が未熟なままに、大人たちや世間からは隔絶したコミュニティの中に閉塞していたこと。それゆえに起きた悲劇だけれど 作家はそれを声高に断罪したり非難したりではなく、あくまで冷静に描き、大人たちは何が出来たのか、どうして自殺に至り、止められなかったのかということを寄り添うように描き、しかし結論は出ないままに終わる舞台は、観客にはずしんと重く、しかし同時に作家の誠実さにも重い至るのです。

未熟な男が、社会に埋没しそうな自分を見つけだしてほしいということに対しては、一歩を踏み出さないことを強くしかりつけるよう。断罪とは違う、これも誠実な描き方なのです。

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