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2016.12.05

【芝居】「ふたつの時間」なゆた屋 1two3 THEATER

2016.11.26 14:00 [CoRich]

女優・ほりすみこによるユニット・なゆた屋の公演。もう一人の女優中野架奈を迎えてそれぞれが出演の短編二編、間に休憩を挟み95分。28日まで風知空知。

帰宅途中、近所の路地で鯰をみかけた。いくつか話すうち、鯰は醤油をのんでみたいと云い、腹を壊して女の家にくる。「鯰」(作・演出/小川拓哉)
屋台が開く深夜3時。猫が餌を求めて訪れる。店主は本をよみ、一杯つけて客を待つ。万歩計にしか見えない「二重空間移動装置」をもっていてどこにでも行ける。常連の女が訪れ、女優として主役がもらえないしもう田舎に帰ろうかという。もう一人常連のセンセイが訪れる。屋根裏に住んで雨を降らせる研究をしているが、唐辛子の本を切望して探し続けている。「月舟町余話」(脚色/BOOKAHOLIC 演出/北澤秀人)

「鯰」は 人間ではないものと心通わせる、という短編。川上弘美の熊の話(神様、草上の昼食)にも通じる雰囲気だけれど、こちらは(多分)両方とも女性で、九州から150年もかけて生き続けてここにやってきた鯰が男にフられたばかりの女を癒す雰囲気。構図はずいぶん違うけれど二つの話に近しいものを感じるのは、語り手である女性の気持ちを強く芯に持っているから、という気がします。おだやかに話す二人、どちらも声高に何かを叫んだりすることもないけれど、どちらの心も間違いなく揺れ動いていることがしっかりと見えるのです。

「月舟町余話」は原作の小説(未読)があって、そこに暮らす月舟町の人々にまつわる物語。キャラクターや物語の雰囲気を借りてある種二次創作のようなつくりですが、元々の話を知らなくても楽しめる雰囲気に作られています。 万歩計を「どこにでも行ける装置」と読み替えたり、価値があるのだか無いのだかわからない本を高く売りつけようとしたりな遊び心。あるいは、店主の妻が作っていたらしい鍋をメニューからは封印していたけれど、久しぶりに作ろうと思い立つことだったり。そういう町の片隅にいきる人々の楽しさと寂しさ、肩を寄せ合って生きていくことだったり、力強く、あるいは折れそうな気持ちを抱えても歩み続ける人々。町の片隅のスケッチ。

元の小説を未読のアタシにとって、正直にいえば、原作となる話に対してどの部分がオリジナルなのか、ということは少々気になります。何かを訴えなければいけない、というわけではないけれど、単なる引き写しではない、というなにかというか。いい台詞、いい雰囲気、いい人々はもちろん小説だけでは成し得ない、立体的に人物として立ち現れるということだけでも価値はありますが。 一番気になるのは、作品のタイトルこそあれ、原作者のクレジットがどこにもないということ。大人の事情かもしれないけれど、これは最低限の作家への敬意という点で少々気になるところなのです。

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