2016.11.13 13:00
[CoRich]
20日まであうるすぽっとのあと、愛知、福岡。ワタシの観た回は、20周年記念の限定アイドルユニットKKT20+のライブ付きで本編140分+イベント40分ほど。
大学生になった息子が家をでたあとの夫婦。興信所を使って夫が職場の若い女と定期的にあっていることを突き止め、妹と一緒にその事実をつきつけてるが夫は弁解しない。
工場の跡地を公園にするはずだったが、解体の費用がなく私有地になったままの廃墟に失恋した女と友達が探検というか、その場所で互いをモデルにデッサンしようと訪れる。そこにある白骨死体に驚くが離れがたい。
沖縄に旅行する男四人組。腹違いの兄弟が父親に会おうと友達と一緒に訪れている。
夫と顔を合わせたくない妻は夜間、清掃のバイトに出ることにする。そのグループにはホームレスたちも混じり、そのリーダーはその中から人を捜している。リーダーは怒りのエネルギーを放出する方法を教え、妻は夫と穏やかに暮らせるようになっている。
夫と目撃された女は同僚で二人で犯罪に手を染めている共犯になっている。浮気ではないのだが、妻には言えない。女はホストに入れあげているがホストは連れない。
最近作の中でも作風がずいぶん変わったという評判も多いようですが、ここ数年の作家は年齢を重ねた人のままならなさ、生きていればいろいろあることを丁寧に描くようになってきています。砂浜で恋心に騒ぐ話や猫が心配すぎて立てこもりをやめる、という話(これはこれでワタシには最高傑作ではあるんですが)から、年齢を重ねた作家は自分の周りどころか、他人の時間軸の前後を紡ぐようになっていて圧倒的な深みを描くようになっていて、なるほどアタシも歳をとるわけです。
社会の中の一つの役割を持っている人々だけれど、描かれることが少ない人々をすくい上げるように描くのもこの作家の昨今の作風の一つです。たとえば、妻が働くことになる深夜のやや特殊な清掃業の人々やそこにつらなるホームレスたち。あるいはいろんな職業だけれど仲良くつるむ四人組の男たちだったり。
心が折れた女友達と一緒に二人で互いに屋外でヌードデッサンでもするかと訪れた工場の廃墟でみつける白骨死体。生と死がこんなにも隣り合わせで、しかも離れがたい気持ちになるのは何か引き寄せられるからなのか。それを時にふざけて見守ってくれる女友達は引き寄せられる女をぎりぎりのところで現実に引き戻してくれるのです。バディ感すらある女友達の存在はきっと作家にとっても大切なものなのだろうなと勝手に思ったりもして。途中の酒場のシーンでのトレーナー姿の二人(異儀田夏葉、桑原裕子)のバディ感、「炎上する君」の二人(1,
2)のよう。二人とも本当に愛らしく。
あるいは姉の旦那の浮気と思えばすかさず介入する妹、経済的にもインテリアショップも何不自由も不満もなく暮らしているのに、何か気持ちに埋まらないもやもやを埋める女、冷静にみれば物語全体では混乱を起こす要素の一つだけれど、最初に見えていた浮気というフレームをひっくり返したり、じゃあ何なのかということを推察したりというもう一つの軸をしっかりと受け止めるのです。演じた今藤洋子はコメディでツッコミとして圧倒的な強みをもつ女優ですが、こういう厚み、しっかりと。
主演を演じる林家正蔵(アタシの世代は(先代の)三平と言いがちですが)の、不器用な造形がいいのです。終幕、公演に弁当をもって寄り添ったが故に、というのも説得力を持つのです。アタシの観た日は少々声に不安があった気がするけれどご愛敬。妻を演じた千葉雅子、抑え続けた中年女性という造形を静かに。夏に演じていたパックのゆるゆる受け流す感じとのこれだけのダイナミックレンジ。
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