【芝居】「鳥の夢」幻想劇場◎経帷子(第21回まつもと演劇祭)
2016.10.28 21:00 [CoRich]
まつもと演劇祭参加の経帷子。60分、30日まで。岩崎邸・倉を円形舞台で構成しています。
壁に囲まれ霧が立ちこめる場所、毎朝多くの鳥が飛び立って壁の向こうへ行くが、そこにいる女は壁を越えられないばかりか、深い霧で壁の向こうにあるものすらわからない。なにも思い出せないが、毎日古い夢を読むように命じられ、続けるうち、徐々に記憶が戻ってくる。
スナックで働く女は娘を女で一つで育てている。スナックの客と偶然街でであい、男はその家に通うようになる。ある時から娘は学校にいかなくなり、空を飛びたいのだと言い始める。
序盤で、人は生まれ変わったら何処へ行くのかと口上し、壁に囲まれ霧がたちこめとなれば死んだ後の世界を描くことはわりと最初から明確に。その四十九日の間に女が「夢を読み、記憶を溶かす」ことで忘れていた記憶を思い出し、鳥となって壁の向こうへ飛ぶまでの過程を観客も一緒になって体験することを丁寧に描くのです。彼女が巧く夢が読めない序盤から、徐々にスナックで働いていたことだったり、客だった男が通うようになってきたことだったり、あるいは娘を亡くしたことだったり。語り口こそゆったりだけれど、テンポ良く短く切り取られた断片を観客は女とともに体感していくことで、その記憶が自分の中にも染み渡るようなのです。
幻想的に灯された火が揺れた空間、床下からのすきま風だって、(アタシの観た金曜夜の)雨だって、すべてが世界を形作るパーツのひとつひとつになるよう。 レンコン男だったり、シャレコウベを運んでくる猫にしても、あるいは野鳥の会や医者と看護師など、時にコミカル、時に幻想的、時にやけに実直なバラエティ豊かな登場人物たちが、入れ替わり立ち替わり、繰り返しもあるけれど程よい長さとリズム、回数の心地よさというか見やすさ。物語の中身とは別にある種の祝祭感を感じさせるのです。
終幕、女が鳥となり羽ばたく瞬間、台に乗り手を広げ、周りを他の人物がぐるりと囲み外を向き手を振り、そして囲んだ人々が腰を落とす、というごくシンプルな演出だけれど、羽ばたく瞬間をきちんと切り取ったよう。もちろん物語の要請するもっとも王道な結末だけれど、据わりのいい着地点をしっかりと印象づけるのです。
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