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2016.10.19

【芝居】「ムーア」日本のラジオ

2016.10.10 18:00 [CoRich]

10日までRAFT。60分。

エロ漫画雑誌に描いた前後編。似た現実の児童虐待事件が起こったために掲載をされなかった。新しい企画として編集部が提示してきたのは、現実の事件をドキュメンタリータッチで描く事だった。
出会った男女はいつしか、何人もの子供を誘拐し虐待した上で殺し埋めていた。

白黒で統一され整理されたフライヤー、当日パンフも新聞を模した体裁の大判を広げた裏側は戯曲全文掲載。いろいろ凝っていて楽しい。

エロ漫画、児童誘拐、虐待、殺人のコンボとなれば現実の問題としてはアタシはまったく共感できない人々を核に。その外側にはアタシたちの現実との地続きを感じさせる漫画家と編集者というもう一つの殻をかぶせ、少しばかり中心をずらして語る二組の会話が物語を駆動します。

そういう嗜好を持った男女が偶然で会い、共振(発振)して暴走してしまうこと自体には理由はありません。それが好きだったから欲した、というだけのこと。だからといって社会的には許されることではないけれど、アタシだって、もしかしたら社会からNOを突きつけられる嗜好が心の奥底のどこかにあるかもしれない、ということに思いが至ると急速に現実味を帯びてくるのです。

物語の核とは違うところだけれど、リアリティを持たせるもうひとつ。 エロ漫画誌に書いた陵辱モノが現実に偶然リンクし、編集部の配慮で別の角度からの作品の企画が持ち込まれる、という序盤の枠組みは互いに敬意をもつという、きちんとした仕事の現場の雰囲気で(出版業界の経験はなくても)腑に落ちる説得感があります。

少女と編集者を行き来して演じる本紗也香の振り幅が物語のアクセントとなって、苦悩し描く漫画家を演じた安東信助は重奏低音のように物語のベースを奏で続けます。男女を演じた横手慎太郎、三澤さきの二人だけに閉じた世界のある種の薄気味悪さは舞台全体を支配していて、物語の世界を強固なものにするのです。

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