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2016.09.24

【芝居】「嘘より、甘い」タカハ劇団

2016.9.10 14:00 [CoRich]

一年半振りの本公演。11日まで小劇場B1。90分。

繁華街の喫茶店。ネズミ講や宗教の勧誘、風俗のスカウトやデモに参加するらしい男たちが集まり突然の雨もあって騒がしい店内。女性の店主はわりと客たちと顔なじみ、杖をついてはいるが店は繁盛している。二階には家主で先生と呼ばれる初老の男が住んでいて時折階下に降りてくるが引きこもっている。
デモが予定されているらしく外は騒がしい中、店の外では人がビルから飛び降りる。警察の捜査が始まり、目撃していた店の客たちはしばらくとどまるように言われる。大きな荷物を抱えた女があわてている。

歌舞伎町特有のスピーカでの呼びかけが聞こえる店内。歌舞伎町という場所ゆえのやや怪しげな人々だったりはするけれど、ちょっとエアポケット的に静かで人の少ない古い喫茶店という場所。

前半は、たとえば生活用品のネズミ講販売だったり、宗教の引き留めだったり、あるいは風俗のスカウトだったりはするけれど、それぞれの手練手管だったり逆にだめ加減だったりするけれど、それを少々コミカルに、しかしいくつかは、日々の中に思い当たるよう。さまざまなサンプルはまるで防犯ビデオのよう。

二階に住むという不穏な男の存在は、やがてこの繁華街に隠れる謎を浮かび上がらせます。

ネタバレかも

それはこの街の小さな雑居ビルで起きた火事(wikipedia)のことで、規模じたいは小さいのに犠牲者が多かったり、目撃されながら行方のわからない人物がいたりという不思議な事実を物語の種にして、宗教で人をあつめビルを占拠し地上げするという手法をテコにして地上げ屋とこのビルと、二階の不穏な男を結びつけて見せます。あれれという間に物語が膨らんでいくさまが鮮やか。

が、それにとどまらずに物語を広げていくどん欲さ。一つは「人が降ってきた」という目撃証言をもとに、自殺のために飛び降りる人だったり、さらには直接関係があるわけではないけれど、「人が降ってくる」ことをつながりにこの火事の10日後に起きた911(wikipedia)に重ね合わせてみせます。もう一つは、二階の男の正体についてで、店主との関係を見せてくるりとひっくり返して店主が隠している姿がみえる終幕。

人が降ってくるというやや情緒的な描写と、二階の男や店主の謎とは、もちろん雑居ビルの火事でつながってはいるけれど、点のままで有機的につながらないのは正直もったいないと感じます。どちらも捨てがたい魅力を持つモチーフでどちらかを切り落とすのは忍びないところ。それでも、前半のにぎやかな人物描写も含め、いろんな人々を包み込むだけの、日本最大の歓楽街の奥深さを描き出すのです。

スカウトマンを演じた夏目慎也の口八丁ぶりが楽しい。 宗教にはまりこんだ女を演じた高野ゆらこは単なる盲信ではなく、あれこれはまりこみつつ到達した発酵ぐあいがすごい。

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