【芝居】「翳りの森」(裏) (劇)ヤリナゲ
2016.9.3 20:00 [CoRich]
「ワーニャ伯父さん」をモチーフに、太宰治を交えて描く70分。4日まで十色庵。同じ四人の役者ですが配役を変えた裏表の二バージョンでの上演。
姪と二人で住んでいる男。そこに恩師である教授が若い妻とともに訪れ病気を治すためといって引きこもるように同居を始めるが身勝手な振る舞いが多い。教授の前妻は男の妹で、教授の現在の妻は男と同じ時期に研究室の同僚だった。教授の診察のため若い医師が往診に訪れている。
恥ずかしながらアタシは未読だった「ワーニャ伯父さん」(wikipedia)(青空文庫)をモチーフに、混乱の原因である教授を役としては登場させず、前妻と現在の妻、姪と伯父という男女二人ずつに役を絞り込んで、ごくシンプルにしかし濃密で見応えのある物語を紡ぎ出しています。 かつて尊敬していた教授に対するだまされたという思いを持つ男、 あるいは若い妻に対する二人の男の恋心、医者に対する尊敬から来る恋心を抱く姪。 おそらくは地方として描かれている舞台、他の都会からやってきて年寄り故の傍若無人だったり、あるいは都会の女性ゆえか洗練され美しく見える女という、少しばかりの混乱。日本の物語として描かれているけれど、きっちりチェーホフの物語になっているのです。面白くはないけれど安定している日常、少しばかりの混乱とうんざりする気持ちや盛り上がる恋心、そしてそれが去り再び静かな日々。チェーホフっぽさがぎゅっと濃縮されているのです。
役を入れ替えた表裏バージョンのうち、アタシの観た裏バージョン。 伯父を演じた浅見臣樹はかつては信頼していた教授を恨むまでの気持ち、その若き妻への焦るような気持ちのない交ぜに、姪と暮らす日々に現れた男の雰囲気をしっかりと。姪を演じた中村あさきは、イノセントさ、一途さが印象的。往診してくる医者を演じたマツバラ元洋は余裕がある男、という対極をしっかりと。男たちを惑わせる若き妻を演じた三澤さき、艶やかさすら感じさせ、きちんと大人の女性を造形したのはアタシには新鮮に感じられます。
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