【芝居】「この町に手紙は来ない」monophonic orchestra
2016.9.4 13:00 [CoRich]
同じ場所で時間を隔てた人々の話を6本つなげた形式で100分。7日まで 3331 Arts Chiyoda。
愛し合う兄妹は逃避行のすえ、戦争で破壊された家に住んでいる。追いかけてきた長兄は、この土地で郵便局を開くよう手続きをして、二人で暮らせるようにする。「凶報の使者」
その孫の世代、夫婦は郵便局を営んでいる。その兄は退役した軍人で若い女を連れて、住み始めているが、妻は出て行ってほしいと思い夫に頼む。「不機嫌な兄弟」
時代はすすみ、工場が建ち町は栄えている。その工場から郵便物を運ぶために男が通っている。春だというのに暑く、桜はもう12月に咲いている。「薄墨の花の咲くを待つ」
さらに時代が進み、郵便局は電送されてきたデータで立体複製装置を作って物体を作るようになっている。銃が送られてきたが発信者も受領者もわからず取り扱いに苦慮している。もうあまり地球も長くはないことがわかり始めている。「銃前会議」
地球の先行きはさらに怪しくなり、町のにぎわいも減りつつある。市会議員のパーティをしているが、妻は気乗りしない。パーティを訪ねて、一人の研究者が訪れる。地球外への移民ではなく、地球をなんとかしていこうと考えている。もうこの世代で終わり、町がなくなるのは郵便局がなくなったときだ。「顔のないロケットサマー」
地球外への移民が始まっている。選ばれたものが月や火星に移住している。郵便局の男は町の代表として選ばれる。女が手紙を持って訪れる数百年にわたって届き続けてきたもの。移民は友人に譲る。ここに残ることを決める。「この町に手紙は来ない」
郵便局があることが町が機能し、存在していることと言うモチーフで描く何代にもわたる家族の物語。その出発点に近親相姦という「ほつれ」を置いて、その後の世代にはそれを理由に匂わせるように、視覚に障害を持つひとびと、というひとつの「血のつながり」を感じさせつつ一つの部屋の長い時間を描くけれど、時代も世代も変わることで、全く違う断片を紡ぐのです
何も無い場所に町が出来て、町も時代も技術も徐々に進んで暮らし向きが変化していき、治安が悪化し、人々が減り衰退していくひとつのつながり。郵便局が家族と紐付く「特定郵便局」っぽいけれど、日本に限定された描かれ方でもないし、透視するスキャナーやら立体印刷なる3Dプリンター、はてはロケットによる移住まで、物語やセットの雰囲気とは裏腹に、ずいぶんといろいろ技術が進んでいいたりして、どこか宮崎駿の世界のような味わい。なのです。
「凶報〜」は物語の発端で舞台の設定を支えます。全体に陰鬱な雰囲気で紡がれる物語。
「不機嫌〜」実直に暮らし続ける弟夫婦、強制とはいえ兵役帰りで天狗になっている兄と若い女、調子に乗ってる兄にどうやって出て行ってほしいことを伝えるかのおびえる気持ちを描くけれど、実は兄と同様の粗暴さを自分も持っているのではということが恐怖なのだと描くのです。
「薄墨〜」あたりからは技術がずいぶん進歩した時代に。町が発展し、工場が稼働しという時代だけれど、どこかそれに取り残されたたような庭であり、この郵便局の局長となっている女なのです。
もっともコミカルに描かれている「銃前〜」は、3Dプリンターで電送されてきた銃をどうするか、大人たちが相談しているようでなにも進展しない会話を延々続けているところを子供がかき回すのが痛快で楽しい。息子を演じた浅野千鶴の破壊力が圧倒的で楽しい。
「顔のない〜」はパーティに出たくない妻と迷い込んできた実直そうにみえる教授、久々にどきどきする感じ。物語の全体に対しては「衰退し始めている町」を明確に描く役割を担っています。
「この町〜」は衰退が決定的になった町の消えゆくひとコマ。全員が移住できるわけではないややディストピアな感じだけれど、せっかく別の場所に行ける権利があるのに、この場所に居続けることを選ぶ男。カッコイイとも諦観とも違うようで、もしかしたら単にそういう気分ということかもしれないけれど衰退がわかっていてもそこに居続けて一緒に沈んでいく気持ちというのは、なんとなくわかるなあと感じるアタシです。
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