【芝居】「未開の議場〜北区民版〜」(B)北区民と演劇を作るプロジェクト
2016.9.4 17:00 [CoRich]
カムヰヤッセンで上演された町内会での会話劇を東京都北区の住民からの役者を加えての上演。ABふたつのバージョンのうち、アタシが観たのはB]バージョン。120分。4日まで北とぴあ・ペガサスホール。
近郊の町。工場で働く工員や農業の研修生として受け入れた外国人が住民の1/4を占めていて、その子供たちが通う学校も始まっている。その商店街恒例の夏祭りに向けて何度めかの会議。今年は外国人にも門戸を開いたフェスティバルとしての開催としての模索が続くが、万引きに悩まされる小売店の店主、工場の労務管理をする担当者などの慎重な意見と、外国人たちにより開いていこうと考える学校関係者の溝は深い。
開演時間中は会議室の施設係を演じる作演がもう一人の役者とともに、エスニックのような鍋料理を作りながら客席に目を配りつつのばかばかしい話を延々として開場時間をつなぎます。 カムヰヤッセンでの上演は観ていないアタシですが、今作、小劇場の役者の持つこなれた巧さとは別に、年齢を重ねて出てくる味はさすがに住民からの役者がもつ力で、それは町内会の会議という場所にはよく合っているのです。
工員として働く外国人という設定は北関東のどこか、という雰囲気。実感としては持ちづらい生活圏のアタシなので、ある種の治安の悪さや日本人住民たちとのバランスが現実のそれと近いかどうかはわからないけれど、「そういう場所がある」ということで十分な説得力。わかりやすい外国人という設定だけれど、それはもしかしたら所得の差だったり、あるいは少し前の日本なら日本の中でもいろいろあった住民の断絶の姿。
万引きや銭湯での入れ墨、溜まり場となっているゲーセンなどが語られるけれど、終盤ではもっと前には連続暴行事件があったことが示されます。それでもこの場所で住み続けるざるを得ない人々が長い時間をかけて、しかし積極的にではなく熟成させてきたバランスが今のこの町の姿だということが見えてくるのです。
外国人に肩入れしすぎるあまりの空回りと、受け入れ自体には積極的になれない人々の差が物語の主要な対立軸だけれど、終幕近く、ずっとおだやかに笑い続けていた若い女の「仲良くすることがもっとも大切」ということは一見正しそうだけれどその奥に潜む「自分たちが外国人の目線まで【降りて】仲良くしなければいけない」とまでいう隠れた差別の視線に自覚的でないことに、やや絶望的になったりもするのです。
曖昧な雰囲気ではあるけれど、本音は吐露した上で、落としどころは探ろうとい気持ちが共有できている会議の終幕、やや楽観的にはすぎるかもしれないけれど、希望を感じるアタシなのです。
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