【芝居】「耳の奥で王様が笑う」(A)第27班
2016.9.3 14:00 [CoRich]
4ブロックで構成されているキャビネット公演のAブロックは短編二つで構成。80分。4日までシアターミラクル。
年上で芸術家として活動する女と同棲しているサラリーマンの男。自由に暮らしてほしいといったものの、作品づくりには力が入り友達に会うために出歩きまわるのに家事がおろそかになる女が理解できない。
「文化の星よ、何処へ行く」
同棲も長くなり会話がすっかり減った男女。女はふと見つけた高校時代の制服でデートをしようと提案する。男は気乗りしないが勢いに押されつきあう。「30歳の制服デート」
同棲するカップルの話二編。 「文化の〜」は 指先から炎を出し心を読みとり重力を操る能力で世界中から命を狙われる男とその恋人という完全にSFな物語を挟みながら核となるのは、もうひとつの、芸術家でわりと自由な年上女と愛情はあるものの堅実なサラリーマンで家計をすべて支える年下男の物語。男女逆転の形つまり、生活能力のない芸術家をめざす男と支える女みたいな構図はわりとありがちだけれど、男女を入れ替えてやや辛辣に描くのはちょっと珍しい感じがします。
もっとも、結局のところは「金も入れない、家事もしない」女がその理由として「芸術活動をするから」なのだということの男の不満、せめて会社の愚痴を聞いてくれたらまだしもという構図にはちょっともやもやする感じがあって、男女の入れ替えだけでは足りず、いろいろ工夫しないとこの状況の男の不満は描けないのだということがアタシを含めた今の社会の状況というか思い込み、ちょっと誰かといろいろ話したくなるもやもやが残るアタシです。
SF風味の男の存在は、物語の上では、ばかばかしいベクトルでリズムを作るということはあるけれど、実際のところ終幕で「不満が爆発し女が家を出て行ったあとに男は口には出せないけれど女のことがまだ好き」ということを表現しようという工夫なのでしょう。でも、実際のところ二人芝居でシンプルに作ってほしいなと思ったりもします。
「30歳の〜」は 女の気まぐれの「制服デート」、コミカルだったり少々痛々しかったりということを通じて描きます。やや無茶ぶりで明るく、制服だって率先して着たい女が引っ張る明るさで前半を押し進めます。単にあのころは楽しかった、あるいは女子校だったからあの頃はできなかった制服デートを体験したいという表向きのノスタルジーを経て、このカップルが抱える問題を観客に後半に至ってすとんと提示するのが巧い。子供ができないことを問題に据える物語は数あれど、そういうことを気にしなくてよかった「あのころ」つまり高校の頃に戻りたい、生まれ変わりたいとまで云って人目を気にせず泣く女の姿の変貌にその深刻さを印象づけられるのです。
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