【芝居】「魔法処女☆えるざ(30)」だるめしあん
2016.9.17 19:00 [CoRich]
魔法使いの女の子は、13歳で修行にでるが処女を失うと魔法の力を失ってしまう。そのことは広く人々に知られている。30歳になってもまだ魔法が使えて同居する猫と話ができる女はそれが恥ずかしく、外ではもう魔法は使えなくなったといっていて、しかし男とつきあったことすらなく、気持ちは焦っている。
「魔法少女」を「処女」に置き換えたワンアイディアだけ、といってしまえばそうなのだけれど、それを処女が失われれば魔法が消え去るということを、他のみんなが知っているというのがスパイスとして巧く効いています。それは、処女、ということだけでもわりとそのまんまかもしれなくて、年齢に応じて自分が社会のなかにどう溶け込んでいくか悩んでいる、ということをうまくすくい取っているのです。職場は楽しいくてやりがいもあるけれど、職場でも言えないことだったり、あるいは職場に同じ境遇の若い魔法処女がアルバイトとして現れてそれまでの自分の価値観を崩すようにそのまま処女でいいというのに直後にあっさり捨てることだったり。
愛をとって処女を捨て、魔法を失うことを物語の主軸に、さらに猫との会話ができる、という「友達を失う」感覚もまたひとつの作家の実感なのかなと思います。その猫が明るくビッチなキャラクタにするのも、ちょっと軸をずらしていて巧いのです。
正直にいえば、物語に対して登場人物が少々多い感じは否めません。いっぽうで、ダンスの華やかさという意味では人数を減らすのは難しいところ、という気もします。 そのオープニングでのダンスに挟まるブラのチラ見せ(かっこいい)など、わりと色っぽいことも扱いつつ、それを自覚しつつ女性たちの立ち位置だったり、まわりとの関係を自覚的に描くのは作家の力量。当日パンフによれば設立からそれなりの時間を経ている作家が、もっと年齢を経て視座がどう変わっていくか、あるいは変わらないかを観ていきたい作家の一人なのです。
30歳の魔法処女を演じた河南由良は可愛らしい表情、それなのに付き合った男が居ないというちょっとコミカルなアラサー女で全編を引っ張ります。友達を演じた木村佐都美、真面目を前面に押し出した造形がよく合う感じ、パン屋の店主を演じた清水大将の人の良さ、裏の顔でもなお(気持ち悪くではなく)その人の良さな造形はけっこう重要で、物語全体が前向きな感じになるのです。
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