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2016.08.25

【芝居】「7 -2016 ver.- studio salt × マグカル劇場

2016.8.19 19:00 {CoRich]

9年前に上演されたスタジオソルトの作品を、神奈川県立青少年センターの芝居塾作品として改訂上演。85分。21日まで青少年センター。

野良犬を捕獲し一週間の保護ののち処分する施設。即日処分される持ち込みも受けている。

「愛護センター」の職員たちの日常とその奥の檻で7日間を待ち続ける犬たち。前回の上演にはなかった犬たちのシーンを追加しているのだけれど、前回そのシーンがなかったこと自体、例によってその記憶が曖昧なアタシです。舞台奥が檻で上手側が一日目、下手側が七日目で、序盤では上手端の犬が時間が進んで下手端に居ることだったり、その移動につれて下手端でTシャツを脱いで舞台に落とすことで死体のように積みあがりデッキブラシで片づけられることなど、あからさまにはいわないけれど、そういうルーチンが繰り返されているということをより明確に表すようになっています。栗木健(スクリーントーンズ、あの孤独のグルメの劇伴だ)による役者たちのパーカッションは日々刻まれるリズム。感情を押し殺すかのように職員たちのデッキブラシはフラットに時を刻み、犬たちは餌用ボウルとチェーンのリズム不穏さの中で激しく揺れ動く感情を発露させたかのよう。

7日というルーチンで運ばれ処分される犬たち。仕事は仕事として感情を押し殺し仕事をしている職員たちだけれど、それは決して感情無くしたわけではなくて、合コンが楽しみだったり、拾ってきた亀が居なくなることにみんながショックを受けたりと、きちんと感情を持って生きていることが仕事とプライベートのコントラストを作ります。 初演では長い時間をかけて役者たちの肉体を疲労させ「生きること」を象徴するかのように印象的に演じられたダンスシーン、当時の「ビリーズ・ブート・キャンプ」をモチーフにしていたけれど、さすがにそのままとはいかず、ちょっと抑えめに。

テレビで取り上げられ「崖っぷち犬」として引き取り手が殺到することだったり、自分の生活の変化で犬を手放すことに決め、即座に殺されることがわかって持ち込む女、引き取り手を捜すための地道な活動をする親子などはややヒールな役回りだけれど、そこはあくまでも記号的に説得力を持って役を造形させています。 あるいは いわゆるキャリアの男と現場の乖離。誰もが望む職場ではないけれどこれもまた限られた三年という期間でここを通り過ぎていくこと。犬とは全く立場が異なるけれど、出口が見えている三年に対する交わらない気持ちが交錯したりするのです

人数が多いとはいえ、芝居塾の塾生たちの台詞は決して多くはなく、物語を運ぶ中心部分はソルトの役者による、という形式は「発表会」としては関係する観客には不満を残すかもしれません。難しいところで、やはり一定のクオリティが確保出来るのは安心だし、当日パンフを見れば、単に役者としてだけでなく、芝居にまつわるいろいろな役割をそれぞれが担うという「公演を作り上げる」スタッフワークも含めて作り上げるのは確実にそれぞれのスキルと可能性を体験させるという意味で「青少年センター」という場所でやる意味も見えてくるのです。

この手のイノセントな役をやらせると圧倒的に巧い浅生礼史はもちろん安定、古株の職員を演じた東享司のオヤジっぽさが安心感。八埜優のチャラいオヤジは生きている人間をしっかりと、キャリアを演じた山ノ井史は気弱さを印象づける造形で動物だけでなく、人間の間にも存在する理不尽を相似形で創り出すのです。

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