【芝居】「雑種 花月夜」あやめ十八番
2016.8.6 13:00 [CoRich]
2015年上演の「〜晴姿」 より、もう少し後、団子屋(実はもう一本ある)をめぐり、なんとミュージカル。120分。7日まで王子小劇場。
境内の中の団子屋、母親とともに働く三姉妹。東京の大学のミュージカル研究会で知り合い結婚した長女は父親が倒れたために会社を辞め夫とともに実家に戻り家業を手伝っていたが、夫は地味な日々に耐えられず家を出て女の元に転がり込む。
祭りの直前、その夫から近くで会わないかという手紙が届く。
主宰の口上という持ち味の劇団だけれど、指三本でタッチタイプしてるといいながら戯曲の執筆というシーンでスタート。あの口上の口調も好きだけれど、これもまた嬉しいかんじではあります。
前作では三女を描いたけれど、今作は一度は結婚して家を出て夫婦で戻りここで暮らすことに決めたけれど夫が出て行ってしまい、夫を実家で待ち続け、家の仕事からも離れられなくなっている「完璧な」長女をフォーカスします。劇中に挟まれたミュージカルはこの物語の枠を写し取り、ゲジゲジの男と池で暮らす鯉の女、いちどは夫婦に結ばれたけれど結局はゲジゲジの女の元に去ってしまう夫、このちょっと広い池で独り暮らす妻とをミュージカルに載せて作り上げます。
ミュージカルが苦手で、歌い上げるよりも台詞の方が絶対に効率というかテンポがいいと信じて疑わないアタシですが、今作は思いのほか楽しいのです。それは「唄う場面を作るために物語を停滞させない」ということが徹底されている、と思うのです。必要なところにすっと唄を差し込んでくるよう。それは作演・堀越涼と音楽監督・吉田能が高度に作り上げた世界なのです。
団子屋の朝の風景を描くのは前作にもあった気がしますし、実際のところ舞台となる団子屋の雰囲気を描く以上には物語には関与しないのだけれど、ルーチンとなる毎朝の仕事を描くこのシーンが好きです。作家自身が体験してきたことというのもそうだけれど、なにより、普通に暮らす市井の人々に対する敬意に溢れているのが気持ちいいように思うのです。
長女を演じた金子侑加はほんとうに美しく。団子屋の従業員と、真っ赤なドレスを何度も早替えする鮮やかさ。ドレス姿のスタイルの良さに見惚れてしまうのです。臨時従業員のおばちゃん(!)を演じた秋葉陽司の妙なリアリティも楽しいし、劇中ミュージカルでは保安官役という振り幅もちょっとよくて、印象に残ります。
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