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2016.08.14

【芝居】「彼女は雨の音がする」キャラメルボックス

2016.8.6 16:30 [CoRich]

一つの物語を中心に男女二人それぞれの視点から描く125分。7日までサンシャイン劇場。

ライターとして働きながら小説家になりたい女。出版社につとめる幼なじみから、大企業の社長の自伝を書くゴーストライターの仕事を紹介される。一度は断る女だが、母親が仕事を辞め叔母と飲食店を始める決意と母親の予断を許さない病気を打ち明けられ、自分の書いた本を出版して見せたいと引き受けることにする。
気むずかしいと聞いていた社長は、会ってみると腰が低いが、過去の話を聞いてもあまり覚えていない。自分が本当のその男ではなく、天使の間違いで死んだ別の男の魂が宿っているからなのだといい、更に その魂の男は役者として映画に出たいのだとインタビューに来たライターに打ち明ける。今なら映画を作るだけの財政力もあると励まされ、映画会社を買収し、熱意ある演技でスタッフたちも巻き込んでいく。

もう一本を後から観て感想を書き始めています。 二本立てのうち、どちらかというと裏バージョンという雰囲気。若い男が叶うはずだった夢目前にして「天使のいたずら」により死んだ男が役者になろうと何度もチャレンジする、という主軸となる物語はもちろんあるけれど、今作の雰囲気はどちらかというと、「老いていくこと」に向き合うような物語に感じられます。物語の完成度という意味ではもう一本に譲る感じはあるのだけれど、もうかなりいい歳のアタシに寄り添う人々が沢山出てくるのはこの「彼女〜」の物語だと思うのです。

病魔で限られた時間、ほんとうにやりたいことに生き生きと立ち向かうことという母親(と叔母)の物語はその「老いる人々の物語」の主軸となります。それなりに貯金だったり地位があったりしても、立ち止まってほんとうにやってみたいことをやる(娘への「もうあまりお金を残してはあげられないけれど、したいことをする」という台詞がとてもいい)という潑剌に刺激を受けるアタシです。

あるいは「中に若者の魂が宿った年嵩の男」が(中の若者の熱意によって)芝居に打ち込んでいく、という物語さえも(見かけの外観では)「ジジイが頑張る」(ブリーザード・ミュージックの台詞ですが)ように見えてくるのです。

終盤、これらの年長者たちに巻き込まれるように、若い女性ライターが前向きに歩き始めます。恋はもう要らないとすら思っていて仕事だけに打ち込んできた女が、ヒトの熱意に触れて、そこに敬意を抱いて恋をしてもいいと思い始めていると感じる終盤が好きなアタシです。これはこちら側の物語の初稿を書いたという真柴あずきの真骨頂。

劇中の時代劇、キャラメルの過去作のあれか、あれだろうなと思いつつ、例によって記憶の曖昧なアタシです。ワンシーンだけですし、今作で物語そのものに影響するわけではないけれど、キャラメルを初めて観る観客にはどう映るんだろうと思ったりもします。

女性のライターを演じた実川貴美子は巻き込まれるように前向きになっていくという若さが勝る芝居で楽しい。役者になりたい男の恋心に気付いてるのかが曖昧な雰囲気もアタシにはファンタジーで楽しい。ホテルの帝王と呼ばれる男を演じた西川浩幸はすっかりと腰の低い感じのままで楽しく、「ジジイが頑張ってる」感が板に付きます。 叔母を演じた岡田さつきはコミカルがちゃんと楽しい。

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