【芝居】「ゾーヤ・ペーリツのアパート」時間堂
2016.7.30 18:30 [CoRich]
戯曲を再発見して上演する時間堂の企画公演。初の芸劇・シアターウエストに進出。休憩込み170分に怯んだけれど、思いの外たのしめたアタシです。7月31日まで。
革命によって没落した特権階級は自宅を労働者の住宅として供給されることを求められる。 自宅の部屋の提供を求められた女は、それを断るために架空の人間を仕立て住まわせていることにしていたが、それも難しくなり、縫製のためのアトリエとしての許可を得ることで要求から逃れることを思いつく。同じ場所を夜は客を集めてモデルと称した女たちに踊りを踊らせ、金持ちや文化人たちが集う場所にしている。
ものすごくロシアっぽい雰囲気の話。特権階級の話だし、もちろんアタシの生活や実感からは遠く離れた話だけれど、ピアノの生演奏(そういえば風琴工房もそうだった、というのはトレンドなのかしら)に乗せた祝祭感だったり、ある種の背徳感だったり、権力があればそこには腐敗があることだったり、恋愛模様があったりと、実感のわかない特権階級の話なのに、実に下世話に生きている人間たちの箱庭を覗き込むような楽しさを感じてしまうのも、アタシの下世話なのです。
観客と並んで座る捜査官たち、という演出。隣が女優でもう顔を向けることもできないドキドキの嬉しさは勿論あるのだけれど、その演出の意図は今ひとつ掴みかねるアタシです。観客の視座というにはあまりに権力的だけれど、時代の背景としては、これこそが観客の立場、という歴史的な意味なのかもしれません。
時間堂にしてこの祝祭感は意外な感じでもあります。時代が一回りして串田和美の雰囲気に近づいているのかとも思ったりしつつ。もちろん、そういうバリエーションが数多くできるのは劇団の力なわけですが。
借金を重ねる女が夜の仕事に「沈められる」(別に風呂じゃないけれど)シーンの緊張感が好きです。恋人が居るパリに行きたいけれど借金でどうにもならない女(五十嵐優)、その美しさゆえに取り込んでしまおうという女主人のお互いに自覚しつつの駆け引きに息を呑むアタシです。ドレスを見て嬉しく思う、という女性っぽさもまた素敵。
その下世話の筆頭格を演じた菅野貴夫はほぼ出突っ張り、時に迫力、時に卑屈、時にダンディとさまざまな顔が楽しい。女主人を演じたヒザイミズキは堂々たる風格で居続けなければいけない柱をしっかりと。思えばもう何年観続けているという女優だけれど、こういう風格が備わったのは嬉しい。メイドを演じた尾崎冴子の眩しさは変わらず素敵。金持ちを演じた得丸伸二も貫禄がカッコイイ。
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コメント
「時間堂にしてこの祝祭感は意外な感じでもあります。」というのは、私も同じように感じました。時間堂ってこう言う感じもあるんだと驚きました。
投稿: 佐藤孝治 | 2016.08.11 10:18