【芝居】「ごはんと祭」(C) ごはん部
2016.8.21 14:00 [CoRich]
去年のお盆に続き、ごはん部としての演劇公演の二回目。A/B二バージョンを基本に、千秋楽(C)は割安な一挙上演。B→Aの順番で20分の休憩を挟んで200分。
村の祭りを盛り上げたいと考えた役場勤めの男が友人の米農家に相談すると米を食べ比べて当てるという。彼が心ときめかせる女の子はぜんぜんその気がないが、ぶっきらぼうなわりに他の女性からは結構モテる。結局あれこれ詰め込んだミュージカルをやろうということになり「右から二番目の米」 ごはん部 (作・演出 保坂萌)
米国研究会を「米を食べる国の研究会」と勘違いした女生徒。顧問の男性教師が毎日つくるご飯を食べる毎日で、どんなに促されても自分で作るのは怖くてできない。焼きそばをつくる途中で教師が場を少し離れた隙に、ちょっと炒めて調味料を入れてみる。「米」劇団ウミダ (作・演出 海田眞佑)
考えるだけで何にでも変化する新細胞を発明した学者だが、命の危険が迫り、謎の女に助けられ匿われる。研究は果たして完成するが、その場を離れると細胞の働きはなくなってしまうことがわかり「Gliese Episode0」ピヨピヨレボリューション (作 右手愛美 演出 匿名○希望)
おばの家を久々に訪れる姉妹。幼いとき以来だ。祖母がなくなったという報せを聞いて来たが、生き返ってパチンコに行ってるのだという。
「トミコおばさん」あひるなんちゃら (作・演出 関村俊介)
賞味期限や産地の偽装が発覚した食品会社の社長はせっぱ詰まってから記者会見を開くことにする。助言のために弁護士が呼ばれ、謝罪の指南をうけることにする。「謝罪のススメ」 FunIQ (作・演出 日比野線)
連れて行かれた夏フェスに感激し突然バンドを始めよういいだす男に、妹たちが説得される。フェスの会場は弁当箱のようだし、ミュージシャンたちは詰められたおかずのようなのだという「ごはんに合うおかずたち」 カミナリフラッシュバックス (作・演出 ニシオカ・ト・ニール)
映画の撮影現場。時間は迫っているが子役が機嫌を損ねていて母親や事務所の社長、スタッフやはてはキャストまでみなあの手この手で機嫌を取ろうとする「食育大作戦」ローカルトークス (作・演出 西山聡)
「右から〜」は主宰団体の上演。C日程は休憩前後とラストにも物語を分散させています。ごく狭いコミュニティの中でのそれぞれの恋心が一つも交わらないまま、一気にミュージカルになだれ込みます。少々力わざな感はありますが、幕開けでイキオイを付けたり、終幕で大団円的の雰囲気を醸す機能もあります。
観客投票で一位を獲得したという「米」は勘違いを指摘されても元気いっぱい、ご飯大好きな女子のイキオイの序盤、食べるのは大好きでも自分で料理をすることを恐れているという中盤、でも、ちょっとその一歩を踏み出そうという勇気、でもそれは成功したとは云えない終盤、でも、彼女はもう一歩ごはんを作ってみようと歩んでいる、という成長譚をきちんと描くのが巧くて、全体にもまとまって、一位獲得も納得なので、女生徒を演じる前園あかりの強烈なパワーに互する作家を兼ね教師を演じた海田眞佑もきっちりと楽しいコメディの間合いの楽しさ。
「Episode0」は 4月のロングラン上演の前日譚。なぜあの惑星にだけ存在する「意識を現実化する細胞」が存在したか、という物語を語るけれど、短い時間に時間も空間も飛び回る物語を詰め込んだのがやや巧く廻らなかった印象があります。女優三人の華やかな芝居は水着姿までというサービスで眼福なアタシなのです。
「トミコ〜」は久々に訪れた祖母のところ、嘘ばかりつくおばさんの嘘をわかりながらもそれを指摘せず、どうしてそうなったかを考えて独身のままいい歳になってしまった彼女のことを思いやる優しさの物語。唐突なことをいったりそこからずれる会話というのは「あひる」の得意技ですが、そこを思いやる優しさに着地させるのはちょっとめずらしい感じもするのです。
休憩を挟んだ後の「謝罪〜」は食べ物から発想したであろう物語。産地や賞味期限の偽装に限らず(今年ヤケに多い)謝罪会見にはフォーマットがある、というのはすでに当たり前になりつつありますが、それがあまりにフォーマットすぎるという違和感を巧く捕らえ、その裏で商売してる奴らがいる、という感じもなんとなくありそうな話。正直に云えば、短い時間の間に多くの映像を挟み込みすぎて、折角の役者たちの芝居をぶつ切りにしてしまうのは惜しい感じ。観客が多分知ってるであろう「謝罪の映像」を見せなくてもごく短い台詞で補うことでリズムを途切れさせないで欲しい、と思うアタシです。
「ごはんに〜」は、夏フェスに出ようと盛り上がる男女が、それに向けて色々相談したり企画したりをホワイトボードを使ってみせる、というフォーマット。正直にいえば相談するシーンが少々間延びする印象なので、ちょっとだれる感じがします。台詞なのか、それとも役者の瞬発力に期待した即興なのかはよく分からないのですが、もし前者ならもうちょっとキッチリ作り込んで欲しいし、後者なら全てのステージでクオリティを担保するような工夫が欲しいなと思うのです。
「食育〜」もまた、個性溢れる面々が面白そうなことをする、というある種の「べろべろばー」で押し切るというのは正直あまり好みではないけれど、ともかくパワーで押し切ろうという心意気を成立させているのは役者のある種のスキルだということはよく分かるのです。母親を演じた加藤美佐江の女性役はもしかしたら初めてかもしれなくて、ちょっと楽しい。
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