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2016.08.18

【芝居】「15 Minutes Made Volume14」Mrs.fictions

2016.8.11 15:00 [CoRich]

もう14回目になるショーケース企画。休憩を挟んで120分。16日まで王子小劇場。

久しぶりに地元に戻ってきた男、女はずっと待っていた。黒い服ばかりを着ていた男に告白できるのは今日までなのだ。 「日々が黒くなるその前…って、」(キ上の空論/作・演出 中島庸介)
父とは幼くして別の男に引き取られた少女。悪ガキにいじめられても守ってくれるヒーローが居て、高校で気がありそうな先輩に告白すれば断られても教師に口説かれて駆け落ち。風俗店に断られたり、劇団に入ってみればシンデレラの「馬車」役で。「みゆき」(ぬいぐるみハンター/作・演出 池亀三太)
海外に文化人類学で留学していた男が帰国し大学に勤めはじめて、世話になったオカルト雑誌の編集者が挨拶に訪れて留学先の大学での噂話を聞きたがる。寝たきりのはずの妻はすっかり元気で研究室を手伝ったりしている。「ハーバード」(日本のラジオ/作・演出 屋代秀樹)
【休憩】を挟んで、
男の浮気を疑う女は男を問いつめる。連絡ができなかったという時間傍らに居たのは男なのだという。 「虹はどしゃぶりの雨に咲く」)かわいいコンビニ店員飯田さん/作・演出 池内風)
ホームレス、公園で若者に襲われ、やってきた警官はもっと的確に殴る。セックスをじゃまされた半裸の男も着衣の乱れた女も殴る。ホームレスの髪を切りにきた女も殴られる。知らなくても殴られる、貶められる。「前世でも来世でも君は僕のことが嫌」(キュイ/作 綾門優季  演出 得地弘基)(
鏡前、化粧をしている俳優、女楽屋がいっぱいだから鏡前を借りたいと女がやってくる。ひどい化粧を直してやる男。「上手も下手もないけれど」(原案 岡野康弘 作・演出 中嶋康太)

「日々が〜」は地元を突然離れた恋人を待ち続ける女、という風情で語りつつ、それがインモラルな関係だったからこその別離だというワンアイディア。白い服だと汚れてしまうから黒い服ばかりというのを象徴的に補助線のように置いて、クリーニング店につとめた理由に落とすのは、ためにするような話なのがご愛敬。恋人の存在は「世間の目」なのだろうけれど、そこにもう一押し存在する理由がほしくなっちゃうアタシです。

「みゆき」は、 誕生日という区切りで女の人生を早送りしてみせる一本。ある年齢まではきっとお姫様で誰もが人生という舞台でセンターなのに、全員がそうではないということに気づく瞬間。今作では劇団に入って馬車役だから中央に居てはいけないと注意される瞬間がそれなのだけれど、舞台に重ねて描くのは言われてみればそのとおり、巧い語り口だなと思うのです。それでもメゲない女の子、門番の役だって、いつでも幸せの絶頂なのだと感じ続けることこそが輝くことなのだ、というひたむきさは、あまりにまぶしい。劇団のシーンから後は少々わちゃわちゃしてて、もっとすっきり作れそうな気もする、というのは勝手な物言いなのですが。

「ハーバード」は アタシは初めて聞いたクトゥルフ神話をベースに敷いた物語。 子供の頃はともかく、すっかり(江戸しぐさみたいな)オカルトとは距離をとるようになったアタシだけれど、 ちょっと面白く感じる一本。自然というよりはひたすらにフラットを通り越して棒読みのようだったりする妙にぬめっとした印象のある会話で、それが不穏さを感じさせます。不治の病のはずなのだけれど完治した人、というのが何かの入れ替わりによってなされているのだけれど、最後に実はもうひとり「入れ替わって」るというのがちょっと怖い話になっていたりして、15分にうまくまとめた印象があります。

「虹~」は ホモセクシュアルの男たちと受け入れられない女というワンシチュエーションで押し切る一本。戸惑う女・百花亜希がひたすらいらいらするところがやけにアタシのココロをざわつかせるのだけれど、正直にいえばホモセクシュアルに戸惑う、というその一点突破だけでは少々物足りない感じ。もしかしてアタシが何かを見落としてる可能性もあるのだけれど。

「上手も〜」は、彼らが得意な「素敵な男女の会話」風味の一本。vol.1の「紙の上の話」や、何回か上演されてる「お父さんは健忘症」( 1, 2, 3) に近いテイスト。楽屋の鏡前で準備する俳優の横に、新人女優が隣に来て、鏡前を借りたいと云い、それが何日か経ち、何年かたち、という加速する時間の中で二人が歩んでいく、というテイスト。キスするとかしないとか、というところで、くるりと結婚式の控え室に変わるというのが実に鮮やかでカッコイイ。そこを境にして暮らしていく二人、浮気を判ったうえでも歩み続ける二人の姿が実に素敵なのです。

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