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2016.07.14

【芝居】「ニッポン・サポート・センター」青年団

2016.7.9 14:00 [CoRich]

2008年の「眠れない夜なんてない」から8年ぶりの新作はより深刻な雰囲気の125分。 11日まで吉祥寺シアター。

NPOが立ち上げた活動に行政が追随した地域の「サポートセンター」は地域の人々もこの場所にボランティアで参加している。NPOのメンバー、若いインターン、非正規だが資格を取れば正規の道も開ける中堅、市役所からの出向者がこの場所を支えている。
NPOのサブリーダーは夫が盗撮したとして逮捕されこの小さい町では皆が知ることとなっている。夫から逃げてきたという女、何かの不安や不満を抱える女たちが相談に訪れている。

カラオケボックスというか、スタジオのように防音設備を備えた三つの相談室を擁する前室というかスペース。作家がいう青年団の基本のフォーマット、セミパブリック、という場所に集い、時に部屋に入り、ときに出入りするという意味できちんと青年団のフォーマットを改めて踏襲していて、慣れているアタシには懐かしく楽しい場所。セットというか場所の雰囲気は「カガクするココロ」(2010)だけれど、その場に集う人々は(なんだかんだいっても大学の研究室という)「選ばれし人々」であり若さ故に未来がある中の悩みだった「カガク〜」よりは、ずっと年齢も高い人々だし、未来があるかどうかは老若男女とわず微妙で、それなのに部分部分はやけに明るいという日常を高い精度で描くのです。こういう雰囲気なのに決して「祝祭」をに近づかずに描くのも作家のポリシーなのかもしれません。

近所の元気な老人たちがこの場所を支えて居るという自負、ちょっと病気したりしてそれを全うできないという負い目、資格を取って正規となれば告白できるかもしれないという気持ち、あるいは美しい女子にはもう彼氏が居るという絶望、生きていれば色んな事がある、ということを描いているけれど、細やかに描き込んだ人々のこと、結論の出ない混沌を「やまと寿唄」(YouTube)(歌詞)に丸投げするのは、ちょっと狡いな、と思ったりもするのです。

単なる日常を描いているように見えるけれど、市役所からの出向者は真摯だけれど、この場所とは違う、父親の地盤を引き継いで次の選挙にでる、という細かさが巧くて、フラットな場所に見えるこの場所にも、格差は確実にそんざいしているということをチクリと刺すのです。

所長を演じた能島瑞穂、ああ、こういう年齢になった感慨深さ。選挙に出るらしい出向者を演じた兵藤公美はホントに凛々しく格好良く。近所のジジイを演じた志賀廣太郎は勿論の安定、その娘婿を演じた河村竜也はコスプレのようで楽しい。近所といえば、おばさんを演じた松田弘子はとっちらかってる感じが楽しく、髪結いの亭主を演じた山内健司の圧巻の精度に安心するのです。

物語に対して貢献している役ではない気がするけれど、島田曜蔵が演じた恋心を演じる男子のあれこれ、噂されてしまったりして慌てる感じも可愛らしく、今作では縦糸のようにバラバラになりそうな話をつなぎ止める強力な力になっているのです。

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