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2016.07.25

【芝居】「大風呂敷」髭亀鶴

2016.7.16 19:00 [CoRich]

演劇を初めて十年目にしての自劇団旗揚げ。「ひげきかく」って読むのね。17日まで王子小劇場。130分。

まずはお披露目、襲名披露よろしく口上。日替わりで先輩の役者たちを呼んで「大口上」
公園に集まる男女。かつてこの場所で自殺した男の幼なじみたち、もうすぐこの場所が無くなると聞いて集まってくる。遊具の中で暮らす風俗の女。あのときに声かけなかったから死んだことを後悔していた男、ぼろアパートの大家、声をかけることに決める、女には姿が見えたかもしれない。「大迷惑」(作・演出 釘本光)
島が見える場所 本家の家、お盆。多くの漁船が大きな鮫が襲ってきて事故にあい大きな被害が出たという。保険会社につとめるこの家の次男が調査に訪れて疑問を呈する。 「大怪獣」(作・演出 柳井祥緒)
中学の時のトラウマがきっかけで神経性の下痢に悩まされる男が、偶然目にした講習会によって劇的に改善し、仕事で活躍し、同僚の女性と恋人になる。娘の厳格な父親は医者で、別の男を娘の夫にしたいと考えている。娘は恋人に父親を紹介したいと家に招くが、相手の男も現れる。 「大便意」(作 白坂英晃/演出 保坂萌)
金物屋から大学まで出したのに、徴兵された息子。幼なじみの婚約者に別れを告げるが幼なじみはそれを受け入れない。息子は両親に生きて帰ると約束し、出征する。 「大學まで出したけれど…」(作 古川健/演出 日澤雄介)

「大口上」でアタシの見た回は他の回とは少々異質で世代が異なる(自らガラパゴス劇団と揶揄するのがおもしろい)山の手事情社の女優・大久保美智子。今回の主宰が通った演劇講座の講師だったとの繋がりで、そのころからただようインチキ臭さを誉めるいい口上に。しかも何より美しさそのまま。

「大迷惑」は心に刺さった棘の話をシンプルに描きます。 自ら命を絶った友人への追悼の気持ちで集まる人々、子供の頃の思い出だったりを重ねながらの丁寧な時間。最後の姿を見かけたのにそれを止められなかった、心に刺さった棘がもう一度うずくきっかけは、この公園でホームレスのように暮らす若い女の存在。カジュアルにホームレスになるという今時の格差を自然に織り込みながら、助けるためには彼女に会う必要があるというハードルを店に電話しての指名で乗り越えるのが少しばかりコミカルで楽しい。

この後の転換は「大転換」というタイトルがでて、まさに大転換。シンプルな素舞台を作る平台に見えていたものlが立ち上がり、合体ロボットよろしくく作り込まれた和室ができあがるのがちょっとすごい。しかもこれ、この後の一本だけでもう一度元に戻すという無駄が芝居っぽくて楽しい。

「大怪獣」は小さな島に現れた大きな怪獣におそわれた漁師町の大きな本家と、それを調査に訪れた保険の調査員の物語をサスペンス風味で。短い時間でしっかりとサスペンス風味を仕上げるのも、しっかりとした日本家屋風味の場所を創り出すのも凄い。大けがを負った唯一の生き残りが書いた絵から起こる綻び。怪獣の物語かと想えば、漁業権を巡る人間の物語に広がっていく、しかも怪獣自体は舞台に登場させないやりかたは、どこかウルトラセブンの香りがすると感じるのは、今年がウルトラマンシリーズ放映50周年というのをアタシがつい最近知ったからかもしれませんが。

「大便意」はタイトル先行すぎるけれど、それに違わぬ爆笑編。短編ではどうしても笑いに寄せた方が印象が強くなるわけで、今回のラインナップではそういう意味では得をしています。便意を我慢する秘技を身につけた男が社会的な成功というか妻を娶ろうかというその瞬間に、緊張のあまり再び便意に襲われるという設定も、その敵役も表だっては云わないけれど同じ便意に襲われている、という少年ジャンプのような対決になって迫力一杯なのです。一本目では亡くなった男を演じた上松コナンがコミカルに便意を我慢する男、という振れ幅も楽しい。

「大學は〜」は、まあ「大で始まるタイトル」を逆手に取ってちょっと変化球。戦争末期の徴兵を巡る市井の人々を細やかに描きます。調整された男と幼なじみの恋人。自らの死を予見し恋人や親に振る舞う表向き、あるいは、ラストシーンの出征の万歳では「表向き」のことしか云わない、ということを描いているのか、とも思います。リアルっぽくあの時代を描くことが上手な作家・演出家だということは知っているし、声高に何かの主張をすることが正しいとも思わないけれど、このフラットさはクールと云うよりは動かぬ何らかの視点を作家が放棄してる、と感じてしまうアタシです。まあ、あの時代を礼賛ではなく批判的な目で見てるのだろうとは思いますが、このフラットさ、時代がこれを礼賛するところが万が一ニュートラルになれば、この芝居自体(ごく表面的には)はそれと同じように時代に流されて礼賛してる、って見えるんじゃないか、というのは考えすぎですかそうですか。

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