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2016.07.07

【芝居】「虹 NIJI」シアターTRIBE

2016.7.2 15:00 [CoRich]

3日までピカデリーホール。90分。

それに巻き込まれた者は誰も戻ってきていない謎の「虹の壁」が発生している。山中に設けられた環境省の出先機関である観測所に派遣されている男はもう三年もこの場所で一人で観測を続けているが常に誰かに見られている気がして落ち着かない。
ある日、環境省のキャリアだと名乗る女が現場をみたいといって訪れる。そのとき虹が発生し、近くの温泉施設の従業員やそこを訪れていた洗浄カメラマンを名乗る男、たまたま近くにいた町の職員らが避難してくるが、その避難指示は観測所には届いておらず混乱する。遠くでは虹をあがめる宗教の信者が太鼓をたたいて礼賛している。

古い映画館を改装した劇場。正直にいえば、タッパがありすぎたり、客席最前列に邪魔な低い塀のようなものがあったりするのだけれど、この劇団は客席を作り変えて、まさに劇場を作り変えてまで上演の環境を作り出します。舞台の上には林の中に立つプレハブのような観測所とその前の広場という感じの場所。きっちりと「そういう場所」を創り出すのです

前半は正直にいって、いろいろ不安な感じなのです。観測員は孤独な三年間を過ごしていて挙動不審になっているし、キャリアを名乗る女はどうしてそこに居るのかわからないままだし、「虹」が発生してやってくる人々はあからさまに取って付けた戦場カメラマンだったり、おばちゃんだったり、若い男だったり、太鼓打ち鳴らすヒッピー風だったり。唐突に不倫の話が出てきたり。

後半になって、徐々に作家の持ち味が見えてきます。廃棄する大企業、それが原因で起きている「虹」のことをその企業は知っているし拡大を続けているのに、ダンマリを決め込んでいること。あるいは同じ知見を持っている行政は行政で一人の職員を送り込むことで人体実験をしていたり。理不尽というよりは知らせるべき事を知らせない、隠しているということに対しての強い怒りが物語を貫きます。真実を知っている謎の人物を置いていたのは種明かしを迅速にするためなのだ、ということが見えるのです。

物語は決してハッピーエンドではないとは思うのです。廃棄施設に反対していた前町長のことをきちんと知っている若者は最後の一人だし、人体実験させられていた職員はパスファインダーよろしく道を探すために出発して消息を絶ち。この場所すらも虹に巻き込まれてしまう。が、強烈なライトを背景に一列に並べバトンを上下動させることで虹が覆ってくる瞬間を美しく創り出すのです。もしかしたら、その向こう側には幸せがあるかもしれない、と思わせる綺麗なオレンジの光。

この座組ではさすがに作家を兼ねるモノ英雄が圧倒的。ちょっと出て、さっと引っ込む短い時間で説明してしまうというのも巧い。

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