【芝居】「逆光、影見えず」MCR
2016.6.25 15:00 [CoRich]
7月9日まで三鷹市芸術文化センター星のホール。90分。
病床に伏せる男・オサム。何が食べたいか訊いた妻に「あずきがゆ」をこたえるが、そんな地味な食べ物じゃだめだといわれる。
高校生のオサム、落第が決まり来ていなかった学校に突然現れ、フランス文学を口にして同級生の女を口説く。
見舞いに訪れる夫婦、女はまだ未練がましい。
見舞いに訪れた同級生たち、女は小説家になっている。オサムは書いているが応募とかしてない。みんな偉くなっていく。
喫茶店、結婚しようという二人、
「逆光」(青空文庫)から蝶々、盗賊というパートをモチーフにとり、 太宰治を思わせる男・オサムを若い頃と歳をとってからの二人の役者で演じ、それぞれに一人ずつのマドンナを置いて時間軸に乗せて物語を紡ぎます。 若い頃の太宰は落第しつつも自信に満ち、まっすぐに一人の女を口説き、晩年は妻にやり込められながらも死期に近づき、静かに暮らしているという感じでしょうか。
物語の本筋、というわけではないけれど オサムを見舞いに訪れる別の夫婦のシーンが好きです。そのあとに描かれる(過去の)若い頃のシーンでは結婚の報告をするのだけれど、どちらも妻はオサムのことが好きでたまらないのに、これっぽちも振り向いてもらえない切なさ。この一途ないじらしさにきゅんとくるのです。妻を演じた伊達香苗は発している台詞と裏腹な気持ちがダダ漏れてる感じが可愛らしく、若い時の女のダイナマイトな感じは客席の笑いをとりつつも、若さ溢れる、という記号として判りやすい。
これも本筋ではないけれど、「そんな格好だからレイプされても仕方ない」だとか、「女は生む機械」のようなポリティカルにアウトな台詞を吐きまくる男が、芝居とはいえなかなか舞台に載せるのは勇気が要るキャラクタだけれど、それを舞台に載せるのがちょっと凄い。演じた日栄洋祐はそんなこといいそうにない雰囲気とのギャップがすごい。それに対して「レイプにカジュアルな服なんかない」と怒る教師を演じた堀靖明は得意なキレキャラだけれど、この台詞のキレとあいまって印象に残るのです。
若いときと年齢を重ねてからを繋げる「転換点」になっているのが終盤にある喫茶店のシーンで、若いときに一緒になった女はどうも心中を図ったよう。 そこで出会った喫茶店の店員こそが、年齢を重ねてからの妻となる男。男が本質的に何かがわかってとかを明確に描いたりはしないけれど、二つの時間軸がつなぎ合わさる瞬間はスリリングで楽しいのです。 若い頃を演じた小野ゆたかの自信に満ち満ちてしかし嘘も積み重ねる感は若さに溢れているのです。年齢を重ねてからを演じた川島潤哉は諦観と、しかし理不尽には戦う気持ちの残渣とが見えるのです。
| 固定リンク
「演劇・芝居」カテゴリの記事
- 【芝居】「夜明けのジルバ」トローチ(2025.03.08)
- 【芝居】「ユアちゃんママとバウムクーヘン」iaku(2025.03.01)
- 【芝居】「なにもない空間」劇団チリ(2025.02.27)
- 【芝居】「Come on with the rain」ユニークポイント(2025.02.24)
- 【芝居】「メモリーがいっぱい」ラゾーナ川崎プラザソル(2025.02.12)
コメント