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2016.06.09

【芝居】「チタキヨとらまのだ」

2016.6.3 21:00 [CoRich]

平日遅めの時間帯に一日限り、2ステージのみの企画公演。21時開演上演時間70分がありがたい。お互いの作・役者を入れ替えた前半の2作と、同じ劇団の作・役者による後半の2作で計4作。

クラスで名字も名前もダブってしまって行き場を無くしていたワタシに呼び名をつけてくれたあの人が好きになって同じ高校にがんばって進学したけど別の恋人ができて。ずいぶん後に告白したけれど、でも結婚式の招待状が届いて「あの人だけの名前」(作・米内山陽子)
高校で同級生だった女たち。同じ会社で一人は東京でバリバリとキャリアを積み、一人は地元採用の一般職。久しぶりに再会したのはその地方の営業所の男が自殺した葬式だった。自殺に兆候に気づけなかった女が地元で祈祷師となっていたもう一人の同級生を呼んだのだ。 「ダイエーホテル」(作・南出謙吾)
バツ4教師、どうしても忘れることができなくて時々思い出す亡き教え子のこと。かつて二人で訪れたカラオケボックスで再会する。それが理由で教師は退職する羽目になったのだった。「ひとりぶんの嘘」(作・南出謙吾)
産婦人科の診察を受ける女。前はそうでもなかったのに、いまさら子供がほしくてたまらなくなったにもかかわらず、なかなか子供には恵まれず、最近は夫は諦めている上に診察も受けてくれない。子供がほしい思いはつのるばかりで「真昼のわたし」(作・米内山陽子)

作家二人のMCを挟みながら、ドリンクありでゆったりとした空間で進みます。

「あの人〜」は好きになったが添い遂げられなかった相手との思い出語りをする一人芝居。物語そのものは別れたわけではないけれど好きだった相手に招待された結婚式への出席という着地点に向かって実にストレートな気持ちの吐露で、そういう意味では驚きはありませんし、それをねらってはいないと思います。もう一ひねり、と思っちゃうのは芝居見すぎのアタシの悪い癖。 21時の回は着物を一人で着付けながらという演出になっていました。19時の回や以前の公演では化粧をしながら、という演出でそれがスタンダードなようです。着付けというのは誰にでもそうそうできるわけではないので、特色ある上演だけれどどうしてもばたばたしがちで、わずかな動きの中で仕上げていく化粧と雰囲気はずいぶん違って見える気がします。

「ダイエー〜」は元々同級生の三人の女たちの物語。キャリアと地元採用という二人はわかりやすい対抗軸ですが、祈祷師として現れるもう一人という設定は少々飛び道具で、さらにかつてスーパーのマネキンだった、というのも無理筋の上塗りな感じもありますが、かつては同級生だったあのころから思えば遠くへきたもんだ、という振り幅をつくるという意味では機能しているようにも思います。 最後の地元採用の女が見せていなかった顔が現れる終幕は短編のもう一ひねり。ありがちな感じといえばそうですがが、隣の課の気のいいおじさんだった故人への悲しみをアピールする序盤との対比で、それでも隠していたことの奥行き。

「〜嘘」は作家自身の出演による元教師と、死んでしまった(裸足、というのがわかりやすい記号になっている)元教え子という体裁。27歳の時の出来事から10年経って、バツ4になったけれど、でも忘れられなくて、思い出の場所に年に一度はいってみてしまう男。普段は訪れない遠い場所に久々にやってきた、同じあの場所に彼女はいた、というファンタジーがちょっといい。思い出を辿るだけといえばそうだけれど、それは確かに素敵な時間であったに違いなくて、囚われ続けてきた男がきっと前に一歩進めるだろうな、と思わせる幕切れは、部屋のインターフォンが鳴って話をしたら消えている、というスパンと切り落とす感じゆえか。と思うのです。

「真昼の〜」は、おそらく一人によるリーディングを三人構成にした上演。結婚10年目の妻、子供なんていつでもできると思っていたけれど、いざ欲しいとおもってみても、なかなか恵まれないというシチュエーションを下敷きに、その女の気持ちの振れ幅。産婦人科医が居る場所の観客に向かって話す切実さ、無駄話から徐々に雲行きが怪しくなって、終幕に追い込むのです。子供ができたかも、という前提の診察の直前、(パンツにみたてた)レギンス(だよな)を降ろすという幕切れはどきりとさせます。が、子供が出来たかも、という思い当たる行きずりの男と、という切実さ故とはいえある種の暴走のみならず、帰宅後の隠蔽工作の冷静さが、カッコイイ、という褒め方もどうかと思うワタシです。

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