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2016.06.04

【芝居】「風が吹いた、帰ろう」桃唄309

2016.5.27 14:00 [CoRich]

29日まで座・高円寺1。125分。 ハンセン病療養施設の島・大島、瀬戸内国際芸術祭の一環として訪れる劇団の人々、 祖母がこの島で亡くなったことを理由に婚約を破棄された孫は、会ったこともない祖母の痕跡を訪ねてやってくる。この島を出た女性は東京にでてさまざまな人と出会う。ちゃらちゃらした男は最初は下心とはいえ病気について考えて初めて企画書を書いて出版に向かう。人が怖くなって仕事を辞めた女もまたこの病気に初めて出会う。

この島を実際に訪れた作家が何作か短編を作り続けてきた(1)ハンセン病(wikipedia)にまつわる物語。海に囲まれた静かな小島の風景の描写から始まり、隔離と偏見に苦しまされてきたこの病気が現在においてもその偏見が続いている、という背景に、シェイクスピア「テンペスト」 や歌、仕草の表現に重きを置くジェストダンスなどを組み合わせ、多くのキャストとともに賑やかに描きます。

物語はこの島に隔離された人々の過酷な日常と患者を隔離し無かったこととして扱う家族たちの昭和初期の時代と、隔離はなくなったけれど人々の関心も薄れ知られていないその孫の時代を行き来します。 隔離施策が法的根拠をもって行われていた過去、最高裁がその誤りを公式にみとめるに至った現在でもなお、あのころと変わらない偏見がまだ根強く残っていることを物語の繋がりとし、治療を受けもうかなりの年齢になってこの島を出た女性が様々な人々に出会うことで、それぞれのピースを縫い合わせるように。もう一つ、人が怖くなってしまった現在の女性がこの事実に出会い、戸惑い、半ば巻き込まれるように行動することで変化していく物語が奥行きを作ります。

シェイクスピア、音頭、ダンスと盛りだくさんな祝祭感を物語に組み合わせるのは、題材の切実さを鼓舞するためかもしれないけれど、正直にいえば、緊張感を殺ぐように感じるアタシです。島流しという接点、更に過去を許すという願いを込めて「テンペスト」とするのは巧いけれど、祝祭感と両方は過剰の結果散漫に感じるアタシです。

人が怖くなってしまった女を演じた高木充子がとてもいいのです。序盤のリア充爆発しろなうつむき加減も嫌いじゃないけれど、戸惑いながらも、でもさまざまなことに正面から向き合おうとする切実さの造形は役者の雰囲気によくあっていて、美しくて気高ささえ感じるアタシです。行動的な女を演じた楠木朝子は幼少と初老という二つの年齢の同一人物を違和感なくスムーズに切り替えてしっかり。 隔離された女を演じた五十嵐ミナは、隔離され、しかしこの島で暮らしていくあきらめの気持ちを細やかに。ちゃらい男を演じた佐藤達は下心目的で知り合ったのに、巻き込まれていく人の良さが腑に落ちます。

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