【芝居】「忍者、女子高生(仮)」根本宗子
2016.5.1 18:30 [CoRich]
58歳になる女、夫とは離婚し、三人の息子は結婚していて、長男夫婦同居している。次男はデザイナーの妻とともに海外に住んでいるが二ヶ月に一度帰国する。三男は兄弟のなかで唯一女児をもうけていて、妻はもう一人身ごもっていて、女児らしいといわれている。
もう一人同居している末っ子の女子高生の若い担任は母親に結婚を申し込み、女子高生は全力で阻止しようとするが、結婚に至る。
三人の息子たちは母親のことが常に一番で、母親の言うことだから従うが新しい夫のことも実は気に入らない。母親は息子たちを溺愛しているが、末っ子の娘には厳しい。それどころか、嫁も孫も自分以外の女を嫌っている。
がっつりマザコン息子3人と冷ややかに見つめる娘。息子と結婚して苦労し理不尽な目に遭う嫁たちの物語。物語のすべての元凶である母親は息子がというよりは男が好きで、再婚相手にも若い男を選んだりという濃いキャラクタを設定するのだけれど、この母親役を三人の息子を演じた俳優が交代で演じるというひと工夫が効いています。母と息子という血のつながりが、みんなに少しずつ似ているだろうという関係を描くことにもなっていて巧い。
さまざまな工夫は他にも盛りだくさんで、観ていて飽きません。忍者・女子高生を体現するように床が開き壁が回りという忍者屋敷のような仕掛けはタイトルを引っ張るようで少々強引な気がしますが、舞台を観ている時に驚きがあるのは客席では楽しい体験なのです。
単ににぎやかで楽しいことばかりではありません。(息子役たちが演じる)母親に理不尽なイジメに遭う嫁たちのそれぞれは、いろいろな女性の生き方にもフックするように作られています。子供ができるできない、子供ができたとしてもそれが男か女か、家政婦のようにこき使われること、仕事で成功しているのに嫁としての奉仕というか立場を強制されること。ワタシは未婚だし女性でもないけれど、いわゆる嫁姑問題をさまざまな切り口で見せるのも見事なのです。
途中に挟まれるのは、母親と教師が出会った日の過程訪問の時のこと。回想シーンなのだけれど、現在の話かと思わせてするりと回想に持ち込むのもうまいし、必要な情報を提示したら「夢だ夢だ」とあっさり切り上げるのも巧い。
ネタバレ
血のつながりで似ている、ということはもう一工夫につながっていて、娘の担任である若い教師が母親との結婚を決め、それは彼には根本宗子に似て見えている、ということ。母親を回り持ちの役者で演じさせるというのは、ここに来て、娘にも似てるかもしれないという説得力を持って立ち上がります。だからこそ、担任だった男が最初は生徒だった女に興味が向いたのにその母親に対象が変わっていくという説得力を持つのです。
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