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2016.05.20

【芝居】「アンコールの夜(男を読む)」KAKUTA

2016.5.14 13:00 [CoRich]

20周年を迎えたKAKUTA、 正直に云えば、この規模の劇団の公演としては2バージョン組み合わせでは少々公演期間が短くて諦めかけたけれど、後半は増席したようで 千秋楽になんとか入り込みました。130分。すみだパークスタジオ倉(そう)。

空手道場の土曜クラスで男女ともから人気も信頼もあった男が亡くなった。橋から飛び降りて水死したが自殺か事故かはわからず、社長で妻もいたはずなのに葬儀も実家の密葬だけということに納得がいかない道場の男は職場に電話することにする。 「井戸川さんについて」桐野夏生(新潮文庫刊『ジオラマ』所収)
飲み会で同僚を送ったあと、街角で自転車に乗っかっていたダッチワイフに声をかけられた。ワタシを連れて行って、という。 「天使はジェット気流に乗って」いしいしんじ(新潮文庫刊『東京夜話』所収)
息子と公園で遊んでいた父親、ふと子供のころのことを思い出す。夕方一緒に遊んでいた友達が帰宅途中クルマにはねられて死んでしまう。悲しみに暮れ、翌日同じ時刻に公園を訪れると、昨日とおなじように死んだはずの友達が居る。助けたいと考え家に送るが、それは繰り返される。 「昨日公園」朱川湊人(文春文庫刊『都市伝説セピア』所収)(1)
・離婚を決めた男女、家具などの仕訳をしている。女はあっさりしているが男は表面的にはあっさりしているが、あきらめきれない。・ 男は酔っぱらって荒れている。同僚の女性にも絡んだりする。・ いとこの家に同居している。いとこが女と揉めていて諫めるが。公園に来てみたりする。・ 妻が久し振りに訪ねてくる。離婚届を出そうとしている。使うといってきかなかったブレンダーは結局使えなかったが。レシピを見つけた。もう一度教えてあげようと思う。 「男を読む。」桑原裕子(オリジナル)

「アンコール」と云っても、いつものようにわりと覚えて居ないアタシはそれぞれに楽しく。役者の安定感は前提として、作を既存の戯曲からとる制限をつくることで演出のオモシロだったり作り込む感じをもう12年も続けてきたのです。10年前をリバイバルする次週の公演は行けそうにないのが残念無念。なのです。 「井戸川〜」は親しいと思っていた人のそれとは別の顔が見えてくるという枠組み。戸惑う気持ち、知りたいという気持ち、知らなくても良かったことを知ってしまった落胆。が、それはそれとして、その場は続くのだという終幕は清々しく、生きていく、ということにきちんと繋がります。死んだ男を演じた加藤裕は潑剌としたスポーツマンという序盤から、いろいろ情けなかったり、女性に対して強引だったりというダイナミックレンジを演じます。表情も楽しい。最年長の男を演じた鈴木歩己は、なさけない、ひいた感じもいい味わい。勤務先の女性社員を演じた鈴木朝代はちょっと意地悪かったりだけれど、調査のバディ感が素敵で、時々のキメ顔も可愛らしい。受付の女性を演じた阿久澤菜々はもう、実に美しくて見とれるのです。

「天使〜」は、道ばたで人間ではないものに声を掛けられるという序盤は童話かと思うが、それがダッチワイフだという一ひねりからの着想。それは「天使」で、歌舞伎町の呑み屋で差しつ差されつしつつ、一晩を過ごすのです。明け方になって公園で二人で眠るシーンの心安まる気持ちから、野良犬たちに襲われて訪れる突然の別れという、一晩の恋なのです。それはたしかに愛し合った男女の軌跡なのです。 ダッチワイフを演じた四浦麻希は、まさにお人形さんのような美しさと声ゆえの説得力、夢のなかだからこその笑い声の響き方が素敵。

唯一アタシ見たことのある「昨日〜」ですが、まあ覚えて居なくて楽しみました。いわゆる時間旅行ネタの芝居だけれど、繰り返されるループの絶望感、そこから抜け出すという決心は「見捨てる」ということだけれど、決着をつける勇気。なにより、その外側にもうひとつ一工夫するということの物語の面白さが実に良いのです。 男を演じた成清正紀、友人を演じたテンションの高い添野豪、磯部莉菜子も少年がかっこいい。

オリジナルの「男を〜」は、もう一方とゆるやかに繋がる点描。離婚を決めた男女という大枠。男の縋る気持ち、女のさばさばした美しさがそれぞれの場面で短いシーンなのに、きちんと気持ちが乗っているシーンになるのは役者の確かな力。女を演じた高山奈央子はキャリアばりばり、時折みせるほつれ感もいい。男を演じた若狭勝也は優しくてちょっとなよっとした弱っちい感じがまた可愛らしく、というのも変ですが。

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