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2016.05.30

【芝居】「(戦場に)行けたら、行くね。」池亀さん、他

2016.5.21 16:00 [CoRich]

22日までRAFT。70分。

「地底人」との戦争が始まっている町。コンビニのバックヤード。 市役所に設けられた臨時部署の職員が召集令状を配って回る。まだ任意の参加だが、店長のもとにもその令状がやってくる。
万引きした女を捕まえ初犯なので住所と名前を書けば許すと云っているが、女は頑として聞かない。呼びだされた彼氏は給料がいいときいて兵隊に志願している。高校をやめたという女性がバイトに雇ってほしいというが、仕事ではないが看板書きをしていて忙しくあまりシフトは入れられないのだという。長年やってきたバイトの男はどうしようか考えている。

日本の町の生活が続く中で市街地の戦争が始まったという状況。いわゆる中東などの報道でみかける、町中に潜むテロリストというか。コンビニのバックヤードの万引き犯の聴取やバイトの面接という日常の描写からそこに戦争が紛れ込んだという状況をするりと作り上げる序盤。

序盤ではまだ召集といっても拒否できる緩やかな感じで。消防団の延長のようになされる訓練は銃を撃つこともするけれど、弾丸は訓練の時しか手にできず。が、後半ではそれが戦闘状態に変わり、召集は強制となり、個人的には戦争に反対だという市職員も淡々と仕事を強制力を手にして進めていて。若い女性が参加しているという反対運動も、その流れにはあらがえず。ゆるかったことが、気がつくとするすると強制力に巻き取られていく感覚は、リアルタイムに感じるアタシの現実の出来事に近い感じでもあって。

「池亀〜」は、地方の若者たちのぱっとしない生活というかマイルドヤンキー的な若者たちを描くことの多い会話劇レーベルだけれど、今作はもう一歩踏み込んで、暮らしの外で起きているより強い出来事である戦争を軸にして、そうなれば間違いなく矢面に立つ若者たちを描きます。金のために兵に志願するし、愛情という個人に許されるはずの自由を戦争という状況では行政によって制限どころか蹂躙されるのは(少々無理筋ではあるけれど)現実につくられた緊急事態条項をにおわせていると感じるのです。

まあ、アタシのバイアスだけれど、その怖いという感じはとても腑に落ちるようだったりするのです。

ネタバレ

万引き女が決してコンビニでは書かなかった自分の住所。彼氏と結婚したい一心で書いた婚姻届を目にした職員が漏らした「出身地」ということばとともに彼氏に渡された銃弾。敵国の人間なのだ、ということを明確には語らないけれど、そういえば、教育もおそらくはきちんと受けられていない感じだったりもするしそこに格差が間違いなく描き込まれていて、日本に限らず、戦争がおこるかもしれないきな臭い状況をコンビニバックヤードという、この狭い空間に箱庭のように描き込むのです。

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