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2016.05.01

【芝居】「ジレンマが嗤う」神奈川県演劇連盟プロデュース

2016.4.23 18:00 [CoRich]

神奈川県演劇連盟と神奈川芸術劇場のがタックを組む公演の6回目。ワタシは初見です。 4月24日までKAAT・大スタジオ。130分。

かつて連んでいた男二人と女。それからしばらく。一人はヤクザの息子だがその道を嫌い便利屋を営んでいる。一人は勝ち続けることが一番とヤクザの一員となっている。その町には二つの暴力団が居るが、会長・組長たちの間での取り交わしで表面上は平穏だった。

ある日、ヤクザの一人が相手のシマで覚醒剤の取引を見つかり、火種となるが、それを仕掛けたのは外からやってきた女だった。便利屋の男のもとにかつての仲間だった女がやってきて人探しを依頼する。それはその火種を仕掛けた女だった。

四人の男女を核に、 二つの暴力団の抗争、刑事たち、暴力団と繋がるクラブを舞台にして人々を描きます。基本的には裏社会に生きる人々、メインとなる四人は、前日譚としてかつては暴力団に酷い目に遭っていて、憎しみを持ち続けているものもいれば、取り込まれてその中で頭角を現すようになるものもいるという立場で描かれます。

物語が進むにつれて、あの人物とこの人物が、という見えなかった繋がりが出てきたりする反面、メインの四人も含め(刑事たちを除けば)みな裏社会の中でしか生きていないことが明らかになるのです。 結局のところ、みな同じ穴の狢に過ぎないと言うこと自体が悪いわけではないけれど、その外側の視点を失ってしまった物語は、人々は次々と死んでいくのに、どのアングル(人間関係)も、恨みか抗争かメンツかぐらいの違いでそう大きな違いに見えなくなって、序盤にあったように見えたある種のダイナミックレンジが失われてしまうのです。あるいはその中の人々だけで描くとするならば、序盤で云っていたこととの矛盾から生まれるはずの大きな葛藤が見えなかったり、せめてそこから抜け出ようということすらもしないのです。物語が人々、せめて一人でも何かの変化なり葛藤なりをそれなりの大きさで描かないとこの人数の座組の物語は厳しい気がしてなりません。

あるいは、人々の恋心でもいいかもしれません。暴力団を憎み続けていた男女が唐突に恋に落ちた、あるいはかつての恋人に再燃する恋心、暴力団に囲われた女たちの中にある気持ち。それぞれに萌芽が見え隠れする気もするけれど、わりとそれはそのまま置き去りな印象。

大勢力の暴力団傘下の組長を演じた小坂竜士は中盤あたりから、任侠ゆえの葛藤が垣間見える確かな力なのだけれど、この葛藤は今作全体からみればわりと小さなパーツの一つにすぎなくて、ちょっともったいなくて、彼の物語こそ観たかったりします。暴力団を憎み続けていた男を演じた藤代太一は、軽さに味があってきっちりと物語を運びます。物語のテンションを要所要所で創り出していたのは、ニューハーフだかおかまだか、という謎の人物を演じるβで、圧倒的に見やすさに貢献しています。

神奈川に住んでいて芝居好きなアタシですが、神奈川演劇連盟を銘打ったこの公演がどういうバックグランドに成り立っているのか今ひとつわからないアタシです。確かに劇場も、あるいは作演も、役者の何人かはここの生まれだったり活躍のフィールドなのだろうけれど、どこか、いわゆる「事務所の」演劇公演のような雰囲気でその土地に根ざした何かは何だろう、と考えるアタシなのです。

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