【芝居】「黒い二、三十人の女」Ne`yanka
2016.4.24 19:00 [CoRich]
25日までThe 8th Gallery @CLASKA。115分。
その国の大公はまわりに愛人たちを侍らせているというが、侍従長にはそれが見えない。国境近くでは隣国が脅威になりつつあるが、大公は侍従長の進言を受け入れず、補給が十分でなかった軍は国境近くの村を襲う。大公はまた身の回りの世話をさせるためのロボットを博士に作らせている。
国境近くの村で尊敬を集めていた賢者は娘を探すため都へ行く。その男を守るために、村の男の一人が家族に見送られ従者としてついていく。二人は都で捕らえられ、賢者はうまく切り抜けるが従者は見捨てられる。
賢者は大公に謁見を申込み、果たしてそれは叶う。
ホテルの8階にあるギャラリースペースにコの字型に客席を配置。プロジェクターで背景のいくつかと字幕、壁際を含めいくつかの照明を仕込んで。
国民のためといいながら、国防に回す金を惜しむ大公、実態がわかっていて様々な進言をするが受け入れられない不満が鬱積する補佐官。大公が同じ部屋に居るという二、三十人の女たちが彼には見えない。あるいは、ロボットに対して会話をする自分がそうでないと思っているロボット。村から尊敬を集める賢者が首都に赴く理由は娘を探すためなのかどうか、従者を裏切ったのはなぜか、 スープに入っていた髪の毛は。 なぜ補佐官は賢者に謁見を許したのか。 人間の裏と表、どれがほんとうか嘘か、頭の中がぐるぐるする感じはどのシーンもスリリングで、刺激的です。これだけ詰め込むとスリルがインフレを起こして単調になりかねないところ、たとえば村の家のシーンの家族の話であったり、牢獄から出られるための ウルトラクイズ風の場面であったりと笑いのシーンも数多く、しかもわりときっちり高いテンションで作り込んだおかげでリズムができて見やすいのは演出の力。
役者陣も魅力的。 若い女を演じた福永理未はほんとうに美しく、しかしヒトとロボットの境界を行き来するような絶妙さが魅力。博士を演じた山森信太郎は卑屈さと自信とが同居する人物を厚みを持って創り出しています。補佐官を演じた吉永輪太郎は、観客に近い視点で物語を運び続けるのに冷酷であり続け、しかしその理由が明らかになる終盤がいいのです。演出を兼ねる両角葉、子供を育て家事をする妻という役が似合う歳になったなぁ、と観続けているアタシは感慨無量になるのです。その義母を演じた鈴木燦はアタシの観た回はかなりヨレヨレな台詞まわしなのはご愛敬だけれど、老いた女に見えるのはたいしたもの。
このスリリングな感じ、もっと他にも似てる物語がある気はするけれど、アタシが思い出したのは映画「スティング」でした。久しぶりに借りてこようかしら。
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