【芝居】「レドモン」カムヰヤッセン
2016.4.10 16:00 [CoRich]
10日まで吉祥寺シアター。2009年の初演を観てるのに覚えてない相変わらずダメなアタシです。人物相関図のイラストがいろいろありがたい。
地球にレドモンという宇宙人が訪れ時間が経って交配が進んでいる。見た目にはほとんど変わりがないが、大人になるとしっぽが生えること、砂を食べるということが異なり、その間に生まれた子は「まじり」と呼ばれている。多くは学校に通わず塾に通っているが、
元の星に帰還させることが基本の方針になっていて、これ以上受け入れない、かくまわないようになっている。
そんな中、ある新聞社は帰還させられたレドモンたちはやがて生体反応がなく、死亡したと推測されるという情報を手に入れ、スクープとして報じる。が、それは入手の方法が不適切だったとされ、謝罪をよぎなくされ、やがてレドモンを家族に持つ記者までもが排除されるようになっていく。
記憶がなかったとはいえ、当時の自分や人々の感想を読み替えしてみると、骨格は同じようだけれど、細かく変えているようです。たとえば、背景を説明していた人形劇がなぜか暗黒舞踏になっていたりしますが、これは劇場の規模を考えれば正しい選択。あるいは、交配による異常ゆえにレドモンを送還させることになるという設定がなくなっていたり。
何より大きく変わったのは初演にはなかった新聞記者という報道の立場を登場させたことです。 2009年から2016年という期間での現実の世界は誤報に端を発して報道機関の政府に対する批判的な姿勢が萎縮しているように私には感じられます。今作はそれを背景に物語に組み込んで、そこにある事実を報道しないという萎縮が起きていることを強く描くのです。
正直にいえば終幕の違和感。レドモンの妻を匿い逃げることにする、それでも子供が迫害されることはないはずという法改正をかすかな光にして、子供を人に預けて夫婦二人だけの逃避行を決行する、というのは現実的な解かもしれないし、単に連れて行けばいいということではいけれど、どこかもやもやする気持ちが残るのです。これもまた、たとえば残留孤児のようなことを想定して描いているということなのかもしれません。
帯金ゆかりが演じた熱血な塾講師は、時に理不尽なヤンキー先生の造形だけれど、物語の要所要所でリズムを作り客席を沸かせます。巧い。勤めている塾を「ひかり学習会」と名付けたのはアレですか作演が勤務する劇場のネーミングライツのタイミング(pdf)だからですか、というのはちょっと考えすぎか。
工藤さやが演じた厚労省の役人、恋心ゆえに機密を漏らすという弱い部分を実に繊細に、色気のある大人として描き出します。子供たちの描写は相対的には減っているのでしょうが、たとえば、ししどともこ演じる娘が「尻尾を染めようとする」という反抗する感じであったり、あるいはママ友を演じた笠井里美は母ゆえの強さがしっかりと、という具合にさまざまな奥行きが感じられる人々が描かれるようになっている強みでもあるのです。
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