【芝居】「10歳が僕たちを見ている」第27班
2016.4.17 14:00 [CoRich]
115分。24日までアトリエヘリコプター。
刑務所から出てきたばかりの男によって、ずっと疎遠だったのに、15年ぶりにあった小学生の時の同級生たち。フリーター、メジャーデビューしたミュージシャン、エンジニア、就職しそこない大学院に残る学生らは、もう地元を出てきてしまっている。が、刑務所帰りの男に半ば脅されるように、
子供の頃に山で遊んだ秘密基地に埋めたタイムカプセルを探しに行くことになる。
フリーターと同棲している女、地元で喫茶店を開いた女、結婚して子供のいる女たちもまた同級生だった。
大人になれない男たち。刑務所帰りはもちろんのこと、フリーターは女に食わせて貰っている状態だし、学生は就職できていないし、エンジニアは鬱病から回復したばかり、一番成功しているように見えるミュージシャンですらもう自分の曲ではないし、内心はかなり不満もある、という何者にもなれていない感。 子供の頃の何者にでもなれそうな万能感、それに比べてまだくすぶっていいる自分への不満。とはいえ、まだまだこれからの若者ですから、この物語の中では何も解決してなくても、不思議と前向きな後味になるのは作家も役者も若いからなのかどうなんだろう。
女たちの方は会社員や喫茶店店主、あるいは主婦といった具合に、ずっと地に足が着いた感じではありますが、それでも男がだめんずだったり、ちょっと人に言いづらい恋人だったりと順風満帆とは違う感じではあります。 今作においては物語の中心は男たちだけれど、女性の会話に冴える作家、女性が脇に廻る今作においてもその会話のキレの良さが伝わります。クルマで山菜を取りに行く女を送る途中の恋愛とか結婚の話もいいし、この会話の中で過不足なくこの地元が山を削って新駅を作る開発の途上にあるぐらいの場所、ということを示したり、あるいはハンドルの左右を間違えて一気に笑わせたり、微妙な底意地の悪さみたいなものも見え隠れして絶妙なのです。 女性の会話ではないけれど、喫茶店の店主とそのかつての恋人であるミュージシャンの会話がとてもいいのです。かつての夢をかなえたかのように見えた二人だけれど、すでにそれぞれの恋人がいて、しかもミュージシャンは自分の思う音楽からは離れはじめているし、店主は店こそ持てているが、それは「金持ちに飼われている」からだという二人の場面がとてもほろ苦くて好きなのです。
見せ方の巧さは、たとえば冒頭の男女の喧嘩をボクシングに見立て、次のシーンの飲食店の呼び出しのベルをうまく重ねて何ラウンドかの戦いをしているようにみせる、なんていう工夫も目をひくのです。
刑務所帰りの男を演じた藤木陽一は、全体に草食っぽい男性陣の中において、高いテンションを維持しつつけて特に前半の物語を少々強引なほどに強く牽引する力が魅力的。喫茶店店主を演じた岩崎緑は少し影のあるクールビューティーが素敵。主婦を演じた板橋優里は飄々とした軽やかさで時に底意地悪く、時に鋭く突っ込むキレの良さが印象に残ります。
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