【芝居】「昴のテルミニロード」レティクル東京座
2016.3.13 19:00 [CoRich]
本編135分、ライブ15分。21日まで王子小劇場。ユース演劇祭の一本。
世界を東西二つにわけて行われていた戦争末期、劣勢側が条約に違反して広めたウイルス兵器で壊滅的な被害を受ける。科学者はそのワクチンを実地に実験したいと考える。後方支援に送り込まれていた学生兵たちの部隊に注射された薬品によって命は助かり治癒力も生命力も格段に向上するが、それはバケモノといっていい異形で、生命を維持するために人間の血液を欲するようになった「ヴァンパイア」という生物兵器に姿を変えるということだった
ウイルスが国内に到達せず、この兵器の開発に成功した島国だけが世界でただ一つ生き残り、彼らは英雄となるが、戦争がなくなったことでこの国はこの兵器の処分を決める。
白塗りのメイクに、イケメンっぽかったり萌えっぽかったりというキャラクタを持つ役者陣。今回は更に旭日旗だったり、戦時中の雰囲気をベース作られた物語。いわゆる右翼でも戦争礼賛というイデオロギーの意図はなく絵柄としてこれを使ったということだろうと思いますが最近ではアニメに多いスタイルを芝居に持ってきています。じっさい白塗りにやけに合うというのは事実だと思うのですが、全体は虚構に作っているのに、日本という国だけを現実から引いてくるというのは、やはり何かのイデオロギー無しには巧く機能しないとも思うのです。
いわゆる2.5次元のイケメン芝居と呼ばれるものはマンガなどに原作をとるものが多いという印象ですが、それを原案はヴァンパイアの物語から引きつつ、オリジナルの脚本、小劇場の中でやっていくということが彼らの強さかと思うのです。反面、台詞を歌い上げているわけでもなく、多くの要素を詰め込んでいるわりに、物語の進み方が実にゆっくりだというのは不思議な感覚なのです。シンプルな物語なわりに上演時間がわりと長いというのはそのせいなのかとも思ったりします。
このユース演劇祭の中では唯一、二回の週末の公演期間。劇場内にもうけられた特設スペース・池亀家に寄って劇場職員に雑談してみれば、リピート率も高いのだそう、なるほど熱い観客も多いし、それにきっちり応えるようにさまざまなグッズ、とりわけ受付にバンと貼られたポスターなど、いわゆる「イキオイのある劇団」の熱気は確かにあるのです。
正直にいえば、この手の「戦時中な雰囲気」はフィクションでも現実でもアニメでも映画でも苦手で避けたいあたしです。(でも流行ってるんだよなぁ。) 戦争至上であったり、男性たちの戦場に女性を一人だけ混じらせるための従軍慰安婦という物語の上でのいろいろな無理を形にするという意味では機能している背景なのでしょうが、まあそれにしても。
年齢を重ねて飄々としているという人物造形で演じきった篠原正明が実に格好いい。印象的なのです。
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