【芝居】「対岸の永遠」てがみ座
2016.3.6 14:00 [CoRich]
ソ連の詩人、ヨシフ・ブロツキー(wikipedia)の人物をモデルに描く物語。 てがみ座が初めての風姿花伝で30日までのロングラン公演。120分。
娘や親を残しソ連国外に追い出されるように亡命した詩人はアメリカで成功した。暮らしていた土地・レニングラード、時代は流れ資本主義となり国はロシアとなり、その場所はサンクトペテルブルクと呼ばれている。詩人が亡くなり、その友人がアメリカから遺品である空き瓶とタイプライター、詩集をもって訪れる。体制の大きな変化の中、詩人の娘は翻訳の仕事をしているが、出版社も立ちゆかなくなりつつある。子供をもうけ今は一人で育ているものの、酒浸りの日々を送っているが、父の遺品を受け取ることを拒否する。
去った父、残された娘と母親とその娘と。翻訳のような知的といわれる仕事をしていながら、国の体制が大きく変わりその足元がゆがみながら揺れていて、暮らしは楽にはならなくて酒浸りの日々でもあって。 作家がなにを考えてこの題材や背景を選んだかはわからないけれど、 物語はざっくりいえば、父が亡くなったと聞いた娘がゆっくりと時間をかけてそれまで許さなかった父を許す過程を描いています。その着地点はそうそうにわかるけれど、その人がどうしてそう考えるようになったか、というさまざまな要因、それは父と自分だけではなくて、自分の娘であったり自分がおかれる経済状況であったりと説得力の厚みがアルのです。
亡くなった父親を演じた半海一晃は軽やかな造形は道化のよう。それは思い出の中にある人の重さがない雰囲気でもあるし、亡くなったと聞くと楽しげな表情ばかり浮かぶという感じでもあって。年齢を重ねてこの軽やかさがいい味わいなのです。 盛り場の女を演じた西田夏奈子は、年末恒例のイベントで観られなかったので勝手に身体でも壊したかと心配していたけれど、力強い人物をしっかりと。酒浸りの女を演じた石村みか、あれこれを気に病むという繊細さをきっちり。とりわけ印象に残るのは、みやなおこで、ソ連を出国してたどり着いた土地で出会う地元の女、生活してる人の雰囲気を作り出しているのです。
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