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2016.03.01

【芝居】「ミセスフィクションズのまんがまつり」Mrs.fictions

2016.2.21 19:30 [CoRich]

マンガを原作にした短編集、という位置づけだけれど物語というよりはスケッチを並べてショーケースのように。 5本立てで70分。22日まで王子小劇場。

最終戦で破れた女子バレーの三年生、引退までのわずかな時間を一緒に過ごす。「いまなく」(原案・鈴菌カリオ)
女子高生三人、二人は恋に破れたばかりだが、残りはまだ恋をしていない。いい人はいるようだから二人は全力で応援する。何でも共有したいから。「橋」(原案・平方イコルスン)
風俗店のバックヤード。結婚し農家に嫁いだ女が久しぶりに訪ねてくるが、新婚生活は厳しく、もうやめたいのだという。義母がもたせてくれたひとつの林檎がいい想い出だが、話を聞いた女はそれをがぶりとかじる。「リンゴの国のお姫様・森田早紀(源氏名 姫)」(原案・安田弘之)
あこがれの先生に関西弁をしゃべってほしいという女子高生、その代わりに草鞋を編むと約束するが、なかなかうまくいかない。「恋の草鞋編み」(原案・平方イコルスン)
訓練のため、その男の子の家に「女王さま」がやってきた。性的に困っている人を助けるすごい仕事にあこがれ、首輪をつけて女王様に服従することに喜びを覚える。ふとしたきっかけで家をでてしまったりするが、いよいよ卒業となる日。「ナオミ女王様に使えた日々」(原案・うめざわしゅん)

マンガの物語を紡ぐというよりは、70分で5本というペースで、全体としてはシーンや雰囲気を描くという体裁になっています。開演前は原作となったマンガを壁にプロジェクターで写すのがちょっとかっこいい。

「いまなく」はまさに、雰囲気を描く感じ。部活に全てを捧げてきた女子高生、引退を前に残りわずかな時間を共有する青春のいちページ。勝てなかったというのがポイントで高揚感よりは静かに進む風景を描くよう。物語よりはその気持ちをにじませます。

「橋」は、まあ同調圧力といえばそうなんだけど、恋愛経験のない一人を残り二人が応援する仲良さにみえてその実は同じ状態に落とそう、という腹黒さがポイント。

「リンゴ〜」は美しい女が風俗を足ぬけするも、それがうまくいかなくてくじけそうになる女。現状への未練の象徴を断ち切ろうとする後押しするひとかじり、そのあと芯だけを残して消える女の一点がポイントの一本。どこか薄幸さを感じさせる表情が巧い岩井七世がいい。

「恋の〜」は、先生にあこがれて編んでプレゼントする女子高生、それをマフラーとか手袋じゃなくて、草鞋で、というのが見事に類似系になっていて。形とかサイズとか作り方を探したり、あるいは応援してた友人があっさり巧く作って恋に勝っちゃいそうというのもありそうな感じ。マフラーでやればそれは甘酸っぱさという雰囲気だけを描くことになるけれど、草鞋にするというワンアイディアが見事。冷静に突っ込みつつ恋をあっさりかっさらいそうになる同級生を演じた堀口萌も、熱血風にがんがん突っ走る湯口光穂も雰囲気によくあっています。

「ナオミ〜」もまた、ワンアイディアの勝負。犬のブリーダーでその子供が犬を懸命に育てるがやがてくる別れ、というなら単に雰囲気だけれど、女王様を育てるブリーダー風というワンアイディア。もっとも、女王様育成という意味では飼われているのは女王様なのに、首輪を付けてプレイとして飼われているのはブリーダーというか飼い主という逆転も思いのほか見事にハマっていてうまく機能しています。女王様を演じた工藤さやのボンテージが眼福。

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