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2016.03.18

【芝居】「裸に勾玉」MONO

2016.3.12 14:00 [CoRich]

13日までシアタートラムのあと、名古屋、大阪。公演期間中、過去の人気作三つの戯曲を無料公開しています。これを含む特設サイトも相当楽しい。ひどい当日パンフを売っているあそこや、あの映画に反省を促したい120分。

弥生時代、親を亡くした子供たちは 村はずれで一人暮らしていた男に拾われ育てられていた。その男は亡くなり子供たちは成長し兄弟として暮らしているが、村はずれで嫌われ者のままなのは変わらない。 家長は気が弱く、その弟はなにも上手にできないのに比べると、 一番下の弟は口が達者で妻も二人娶っているが、同居している妻たちは占いや踊りばかりで働かない。。末っ子の妹は何でも器用にこなし、兄たちからかわいがられている。
ある日、スーツ姿の男が突然現れる。隣国ときな臭くなっていて警戒されるが末っ子は匿うべきと主張し、兄たちも従う。その怪しい男を捜して村長(むらおさ)からの使いが訪れ、見つかってしまう。

過去に時代設定をする芝居は数あれど、弥生時代という設定はワタシは初体験。ほんとうに想像するしかない時代も、現代のひとびとも考えることはそう変わらない、というだけではありません。いわゆる同調圧力というか、そのコミュニティに属さない人々への仕打ちを、差別を受ける側の視座で描くのです。 コミュニティに属さなくても人は生きていかなければいけないというわりとシリアスな題材をベースに持ち、終盤ではある種の悲壮感すらある物語にもかかわらず、きちんとコメディとして描くのは作家の確かな持ち味で、時代の設定も、現代人が登場するというバランスも絶妙なのです。 もうそのコミュニティとの格差は諦めて受け入れている人や、その中でも積極的に関わっていこうと考える人の中に、少々唐突に(しかもスーツだ)現れる男。その男はもと居た時代でも上司の案に従わなかったり妻は居ても巧く生きられない感じだったり。一人抗う男、もっと上手に生きればいいのにと云われても、変わらない男。 もしかしたらどちらかが夢のような描き方、もしかしたらそれは悪夢かもしれないのです。 ある種のファンタジーだけれど、この男の両方での立ち位置が変わらないことが強力な補助線になっていて、私たちの生きる現在と弥生時代を地続きにする効果を生むのです。これもまた、作家の確かな力。

弥生時代のリアリティをつくる一つの工夫が見事。濁音はないけれど半濁音があるという言葉というルールにするだけで、違う時代の話に見えるのがすごい。あるいは現代人からの単語をたどたどしく話したり。教えられないのに「スーツのような」という台詞が入るのが、ああそうか、現代の男の頭の中、つまり夢の中の話かとおもったり。 とりわけ、 嫉妬という概念がないこの時代、一夫多妻で夫が他の妻にばかり向き合うというもやもやした気持ちを抱くけれどそれに言葉がないところに、現代の男があっさり嫉妬という言葉(と概念)を与えるという会話の楽しさは、この時代を舞台に描くからできることで楽しい。

その国のきな臭さ、そこに一人でも抗うことの凄さ。正直に云えば、 終盤は自己犠牲なのはちょっと怖い感じ。しかし、ずっとずっと過去の、あるいは夢の話に落とし込むことで私たちの視座からの距離感が絶妙にとられていて楽しいのです。

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