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2016.03.15

【芝居】「ホテル・ミラクル3」feblaboプロデュース

2016.3.6 19:00 [CoRich] ラブホテルの一室を舞台にしたオムニバス公演の三回目。 (1, 2)。 125分。13日までシアターミラクル。

童貞だとはやし立てられ「ホンバンの前に」(前説)
ワケアリ客の潜伏のためのVIPルーム担当となったアルバイト清掃スタッフの女、1週間匿われている男は人を殺してきたらしい。いよいよ出て行っていいという日、男は女にカラオケを歌って欲しいと頼む「VIP」(作・上野友之)
あの手この手でデートからホテルに持ち込んだ女だったが、コトの後に男は逃げるように帰ってしまう。泣きじゃくる女は親友を呼んで話を聞いて貰おうとするが、そもそも間違いばかりでちゃんとした手順を踏めば良かったのではないかという「エンドゲームスタディガール」(作・深谷晃成)
ラブホテルの清掃バイトをしていた大学生の男はあろうことかオーナーの恋人に手を出してしまい、ヤクザに縛り上げられ、実家から金を引き出そうとされている。「後始末」(作・米内山陽子)
互いに配偶者がいるのに互いに金を払い月一回のセックスを続けている男女。愛情が無いカラダの関係だから続いていると思っていたが、女は妊娠を告げる。「愛(がない)と平和 -Bagism by Love&Peace.-」 (作・古川貴義)

「〜の前に」はコミカルで少々唐突な前説。ダンスがついてちょっとカッコイイ。

「VIP」は作家の元々の持ち味の一つ、サスペンスを下敷きにしながらも、ある種極限状態の中で長い間一緒にいる男女の間に芽生えたかもしれない好意、という気持ちの揺れという繊細さがいい。カラオケを歌うの歌わないのというのがちょっとラブホっぽいアイテムではあるけれど、基本的にはラブホじゃなくてもいいじゃないか、という物語なのはご愛敬。もっとも、ちゃんと愛の物語にはなっていて。女を演じた武川優子のちょっと低い声でテンション低いままに進む会話だからこそぞくぞくする感じ。

「エンド〜」は今回の中では一番の爆笑編の仕上がり。 がつがつとくらいつく肉食女、ことには及んでいても愛情に発展しないいわゆるワンチャンに終わる間違いにつっこみまくるという仕立て。 可愛らしさよりは欲望に忠実すぎる姿をコミカルに描いて、空回りするドジっ子の可愛らしさがでてくるのが楽しい。相手の男を舞台にそのまま残し、回想というよりは再現VTRっぽい感じでみせるのは、どちらかというとコントだけれど、こういう短編集ではテンポも良く、有利です。肉食女の中村桃子は可愛らしく、突っ込み女の前田友里子はこのテンポのコメディを確かに成立させるちから。

「後始末」は美人局かとも思うヤバい女に手を出してしまった男が縛り上げられていて、でもこんな状況だってお腹は空くし、女に馬乗りにされれば勃起もするし、という「生きている」ことの哀しさというか可笑しさというか。コンドームをいやがってみたりと女に対していろいろ男が悪意なく雑な造形になってるのが若い男という人物のリアリティをつくります。英語がやけに巧いインテリヤクザを演じた野澤太郎は声もそれっぽくて、印象に残ります。

ちょっと色っぽさ足りないなと思ってたところに最後にきたのが「愛〜」。濃厚なベッドシーン、眼福なのは間違いなくて喜んじゃうオヤジなアタシだけれど、正直ここまで濃厚にしなくても物語にはちゃんと力があって。愛情と静的な相性は必ずしも一致しないということを徹頭徹尾貫いていて、セックスに溺れているといってもいい付帯r。男の妻が怒鳴り込んでこようというシチュエーションにおいてももう一回しよう、という貪欲さ、それもどちらかが求めてるんじゃなくて互いにそうなってしまう、というのは、どこにそんなの落ちてるんだと思わなくはないけれど、そういうこともあるかもしれない、という深みがあります。 ほんとうに色っぽいベッドシーンを繰り返して、その中から徐々に見えてくる二人の関係も巧い。 不倫している二人のベッドルーム、という意味では 「セイムタイムネクストイヤー」の最初のほうの一年を切り取ったようでもあって、この物語は刹那的に終わるけれど、もしかしたらこのあと何十年も続いちゃうのかもしれない、ということを勝手に妄想したりしてしまうのは、歳取ったのかなぁ。アタシ。

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