【芝居】「反復する、イクツカノ時間と、交わる、イクツモノ時間の中で、僕等にできる、イクツカノこと。」そめごころ
2016.2.13 17:00 [CoRich]
愛媛の後、14日までの王子小劇場は若手チャレンジ枠としての参加。その後福岡での公演。85分。
マイナス20℃の向こう側との壁。壁の向こうに行きたい男。明かりを見つけて飛び込んだ先に居たのは少女だった。少女は目を開けたことがなく、壁の向こうの音から壁の向こう側の景色が見えていて、それを床に描いているのだという。
大きな黒板を床にした八百屋の舞台。男、少女、演出家役、演出家という感じの四人の芝居。壁があって、壁の向こう側は見えないけれど想像してそれを描いている少女、音を丁寧に聞いて描き出す強固な世界。「壁に囲まれた中で自分も世界を作っている」という演出家の台詞にあるように、全体としては、演劇を創り出す人、作家であり演出家のモチーフという芝居なのだと思います。どこまでいってもはてしなく、芝居の間もだめ出しをしながら同じ事を果てしなく繰り返しているような雰囲気もそれを加速します。
壁からの想像かどうか、ベルリン、あさま山荘など、閉ざされた空間をモチーフのようにしてるようなシーンがあったり、どうも蔵に閉じ込められている風の少女の描写があったりと、いくつかの要素は入るのだけれど、どれもが、この閉塞と繰り返しの類型を描いているよう。劇中の少女はあくまで快活でパワフルだけれど、どこかうんざりしてしまうような気持ちを感じるのは舞台からなのか、あるいはアタシの何かに芝居が触れたからなのか。
芝居のダメだしや準備が芝居の中に組み込まれているような感じなのは、メタな構造を一段足しているとはいえますが、アタシにとってはどこか息抜きできる日常のアタシたちに地続きなシーンが入っていることで気持ちを緩めて安心出来て嬉しい。キリキリと精度高くスタイリッシュに作り上げる方法もあるかもしれないけれど。
ちょっと観念的な台詞も多いし、ぐるぐるとして何処を見たらいいか判らなくなっちゃうという意味で、アタシの好みに近いとは言いがたいけれど、 一つのステージの終演時刻が次のステージの開場時刻、という風にタイムテーブルが組まれているのが一工夫。舌を巻くのです。 開場状態のまま、舞台のプリセットなど次のステージの準備をする役者、スタッフたち。ステージの中で繰り返される果てしなさは、一つのステージが終わっても次へと切れ目なく繋がるよう。芝居における反復があまり好きではないアタシだけれど、ステージとステージの間をも繰り返して、果てしなく続く時間を描こうというのは新鮮で刺激的。何度も使える手ではないと思うけれど。
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