【芝居】「ありがとねえ!」梅舟惟永企画
2016.2.13 19:30 [CoRich]
120分。14日まで早稲田どらま館。改装後初めてなアタシです。一人の役者がいろいろな作家に頼むオムニバス構成。
海岸に遊びに来た女、水着に着替えようとしたら見知らぬ女が水着を忘れて来たので貸して欲しいと相談してきた「ジョニー」(作・池田鉄洋)
コーヒーショップで話をする女ふたり。友達の悪口の話で3時間を過ごしたが飽きた女は友人に語りかける。あなたの彼はワタシとも付き合ってるけれど、どう思う?。「仲良きことは」(作・喜安浩平)
一人暮らしの老女。かつて一緒に暮らしていた女のことを思う。結局出て行ってしまったけれど。「春告花(はるつげのはな)」(作・奥山雄太)
家を出ている長女、次女も含めて四人姉妹が集まる。母が亡くなって十年。父親が書き置きをして出て行ったという。「父はマニラに行きました。」(作・岩崎う大)
企画した役者・梅舟と三人の役者がそれぞれに二人芝居。最後の一本は全員が出演という構成。つながりがあるわけではなくて、一人の役者がいろんな役を見せるのを楽しむのが吉。
「ジョニー」は水着を貸す、借りるというまあほぼあり得ないシチュエーションをどかんと打ち上げるのは、コメディに強い作家の雰囲気で。ここで水着を借りて着替えなければいけない女の論述に対して貸せと迫られる方はいたって普通に初々しいデートの一場面。貸せといって迫る方はその無茶な依頼のわりには、あこがれているだけの選手と何かあるかも、というだけのこと。それぞれ深い想いはあるのだけれど、実際のところ冷静に考えれば水着であることがどちらもそう決定的ではないのに、それを力づくではなく言葉で勝ち取ろうという全体の枠組みは楽しい。無茶を言う女を演じた鹿野真央、テンションの高さも圧も凄くてこの座組では格が一つ違うぐらいに。
「仲良き〜」は、不思議な会話劇。仲良しに見える二人、相手の彼が私と浮気していたらどうするか、実際には居ないのに、ということをぐるぐると繰り返す会話。暇つぶしというテイで、ゆるく見えるけれど、ここにいる二人のどちらが選ばれて幸せになることを延々競っているという風にも見えて、それはそれでまた違う風景が見えそう。傍から見てそう大きな物語があるわけでは無いけれど、遊びの筈がいつしか静かにマウンティングしあってるように見えたりして。いろいろな上演、というよりはセリフはいくらでも替えて、こういう二人の会話という芝居を様々に作り出すバリエーションのベースとなりそうという意味で作家の力を感じる一本。
川村紗也は、こういうちょっと理屈っぽくしかし拗ねがちな女の子をやらせると抜群に巧い。
「春〜」はイマドキらしい同性婚の話かと思えば実はそうでもなくて、一緒に暮らすことのうれしさ、それをあきらめざるを得なかった気持ち、おそらくはその別れのままに老婆となってしまった女の風景。長い時間の流れをぎゅっと圧縮してハートウォーミング風な一本に。 細長い部屋とか意味がありげでほったらかし、みたいなのも作家の持ち味といえばそう。 ことさらに取り上げたりしないけれど、別れた女の孫が居る、ということは彼女は結局は男と子供を設けたという切なさはちょっといいし、孫娘が振り向いた瞬間に、白い粉が振ってきて白髪となるという演出は成功しています。
「父は〜」は四人姉妹、寛大に受け止めようとした長女に対して次女は許せなかったりという拮抗しっぱなしのパワーバランス。相手に子供が居ると聞いて、不倫している長女が大泣きしてそのパワーバランスが崩れるところが物語の結実点。元々のアナウンスは二人芝居だったものを四人にしてどう変わったのかというのはちょっと興味あるところ。
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