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2016.02.15

【芝居】「春は夜来る」ルソルナ

2016.2.7 12:00 [CoRich]

8日まで王子小劇場。120分。

若くして男が亡くなってから約一年。その妻はまだ夫のことを忘れられず一歩も前に進めずにいる。男の姉が見かねて、見合いをしようと二人で旅にでる。「結婚応援サイト」で本気を見せた男を訪ねて回るのだ。
山形の造り酒屋の男、本人はなにも知らず亡くなった祖母が孫の将来を案じて投稿していた。「第一話・みちのく女子ふたり旅」
愛知のキャバクラ・ホストクラブのオーナーの男は一年にもわたったアプローチをしてきていた。結婚しないとこの店のオーナーでいられなくなってしまうのだ「第二話・色恋半島 恋景色」
千葉の島で暮らす男やもめ。妻を亡くしている。バックトゥーザフィーチャーが好きすぎて周りが見えなかったりするが、一緒に旅を続けてきた姉は同じ映画が大好きだった。「第三話・愛の小島に雪が降る」
一人福岡を訪ねた女だったが「第四話・春は夜来る、夜風を連れて」

それぞれのタイトルは当パンにはなかったので、プロジェクタで映されたもののメモを頼りに。間違ってる気もします。というか、芝居観ながらメモ取る癖をやめないとなぁ。(時々隣の席の人に怒られたりする)

亡夫を忘れられない若い女の心を整理する過程のロードムービーといってしまうと身も蓋もないけれど、そのベースをきちんと保ちつつ、時にベタに、ときにすてきな言葉をちりばめつつ、全体としてはコミカル要素強めで物語を進めます。前に進めなかった女だけれど、前に進みはじめた人々を目にしたり、同じ境遇の人がどう次の伴侶を迎える気持ちに至ったかをはなしたりを丁寧に紡いだりという語り口だけれど、これでもかと詰め込まれた、あからさまにオーバーアクションだったりという記号化された人々が周りを支えていて見やすく、120分を四話構成というわりには長さを感じさせないようになっています。 わりと自分の劇団ではフラットにタイトな芝居をつくりつつある作家ですが、こういう軽妙な語り口をバラエティ豊かな役者たちが演じるのも私はこの作家について好きな雰囲気で、若い役者たちがそれを演じるのをみることのうれしさ。 それぞれの場所に居た男たちはそれぞれの個性、まじめであったり一途だけどオラオラであったり、趣味が同じだったり。そのそれぞれに亡夫の面影が重ねて見える、というのは巧く一本の背骨を作った感じがします。ドライバーだったり人力車の車夫だったりする同じ顔の兄弟を並べるのも、ベタだけれど見やすい。

一本目は、この物語全体の状況説明を強く担います。どう考えても出会い系サイトにしか見えない「婚活応援サイト」なるものをコミカルに、しかし、会ったこともない人を訪ねて回るロードムービーという荒唐無稽な設定にきちんと落とし込むのです。
二本目は、派手なキャバ嬢やらチンピラやらでにぎやかな雰囲気。見た目にも華やかで楽しい中でちゃらい感じに見えるけれど、そんな中にしっかりと思うまっすぐな気持ちを描きます。
三本目は、年齢がずいぶん上の男やもめ、もう結婚とか考えてはいけないと思い始めているけれど、決して遠い日の花火ではない残り火な気持ち。花火、というシーンがそれを思い起こさせたかというのもアタシの気持ちになんか近い。
四本目はもう亡くなっていた男、それを何か思い起こすわけではなくて、「春は夜にやってくる」というタイトルに組み合わせて、もう一歩、先に進んでいく気持ちの光明。 

村の子供たちを相手にした相撲のSFXっぽさ、 作家の信頼かどうか、ドライバー・車夫からSFXのような相撲のシーンだったり、恋人だったりという振れ幅の大石憲は安定感。序盤ではスケベ満載なのに三本目で素敵な中年というヨシケンのギャップもいい。 小林春世のホステスというのも半年前を思い出したりして、それはツッコミの面白さという感じか。

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