【芝居】「逆鱗」NODA MAP
2016.2.11 14:00 [CoRich]
130分。3月13日まで東京芸術劇場プレイハウス。
大きな水槽を抱くその海中水族館、遙かに深い海底に生息する人魚をとらえようと鵜飼いの末裔の館長、その娘の人魚学の研究者たちが先を争っている。電報配達夫はその調査のチームに入るが、訓練中、危機的な状況に落ち込み海底で人魚に会う夢を見る。人魚が捕まらなかった時に備えて水族館が行ったオーディションに現れたのは、その人魚そっくりの女だった。
魚の一部を切り取り人間の上半身を据えたと考えられるシイラニンギョの半身が大量に見つかる。
前半は深海にいる人魚とそれを捕まえようとする水族館だったり学者だったり。半身の魚をつなぎ合わせてできたという人魚の話を挟みつつ、全体には大量の鰯の流れをコロスで表現したり、コミカルに登場人物たちを紹介しつつ、実は前半にはほとんど物語は進みません。
ネタバレ
物語のメインは後半にあります。「人魚」という言葉、あるいは(魚雷を)半身にした切り身を繋いで人間を入れたという、一点をつながりにして、人間魚雷・回天を語ります。それを知らない人にとってはもちろん意味もあるのです。
が、実際のところ、それがどれだけ悲惨な兵器であったこと、あるいはその攻撃に意味が無かっただろうこと、それを命じた現場の上官の苦悩、上層部の責任のとらなさ加減など、 あからさまには批判しづらい話ではあってもwikipediaやあるいは書籍など、どこかで見聞きしたような話だなぁと感じるアタシです。
悲惨な話が悪いわけではありません。でも、これは「エッグ」 (1, 2)の焼き直し、と思えてしまうのです。 野田秀樹ほどの作家、これだけの役者を揃えて、現実がきな臭くなってきた今、この題材を過去を過去として描くばかりで、私たちの現実から地続きの未来として描かれたように思えずアタシは残念なのです。
コロスで表現した鰯の群、偏光する半透明の板を自在に使う水槽のシーンは実に美しく、幻想的で目を奪われて印象的。 瑛太は骨太にしっかりした造型。井上真央は怖い人物というのが思いの外よくて。前半をコミカルに支え、後半は現場の上官というもっとも苦悩する人物を高い精度で演じた阿部サダヲがとてもよいのです。
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