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2016.02.03

【芝居】「不完全な己たち」gojunko

2016.1.24 17:00 [CoRich]

母に大切に育てられ、伴侶も見つけたものの生まれた娘は死んでしまった女。女は普通に結婚し幸せな人生を送ってきている。幼なじみは愚痴ばかりで望みは高いし移り気で結婚できていない。美しい顔はほとんど整形で勧められているけれど踏み切れない。 叔母は男とつきあったことのないまま更年期にさしかかり、亡くなった娘へ安物の洋服をいつも買ってくる。 弟はいつの間にか結婚しているが、姉のことは妻に紹介したくないといい、縁を切るという。 夫は帰ってこない。愛人と称する女がきたりする。
女の鼻は豚のようだった。

子供が死んで一年が経ち、結婚は母が金を男に渡して仕組んでいたり、友人も叔母も弟や夫まで自分に厳しい言葉を投げつけてくるようになること。結婚できないで整形に手を出した友人よりも、男とつきあうこともなく年齢を重ねてしまった叔母よりもどこかで幸せだと思っていた自分だけれど、その実、ブタ鼻ゆえに見下されていることに気づかされること。

ブタ鼻はやけにリアルで象徴的に使われるけれど、言葉でそれが明確に示されることはありません。 何かの象徴なんじゃないかと思うアタシです。美醜の話なのかあるいは病気のようなものなのか、 あるいは見た目ではない何かなのかは実ははっきりしません。幕切れで娘が云う「もうそれいらないでしょ」という言葉はそれが自覚的に手にして、捨てることができるものなのに、捨てられないものとして 今まで固執してきた、ということなんじゃないかと思ったりもして。

自分が可愛がられなくなったことを寂しく思うこと。それは一般的には弟や妹が生まれたら、ということ なのだけれど、今作では不格好な金魚を象徴的につかっていて、それ憎しと思ってトイレに流してしまうことがかなり象徴的なのです。

終幕近く、女の娘が死なずに育っていっている世界は母親が夢見たステロタイプな幸せ。 自分を見放した周りの人もまだその周りにいるけれど、それを見ている自分はその中には居ないというのは絶望に近い感覚なのです。

愚痴を言い続ける女を演じた石井舞の気の強さを押し出した造型がいい。謎めいた女かと思えば娘になってみたり母親になってみたりと自在に行き来する小瀧万梨子は、確かな力に裏打ちされていて圧巻で、この物語世界をきちんと支えます。

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