【芝居】「ライン(国境)の向こう」劇団チョコレートケーキ with バンダ・ラ・コンチャン
2015.12.26 19:00 [CoRich]
ポツダム宣言を受託しなかったことで日本は南北がそれぞれアメリカ・ソ連の影響下で別々の国となっていた。
二つの親戚同士の家族が暮らす小さな村落は国境により貫かれ国境警備の兵士が一人ずつ送られてきたが、内戦状態の国の状況とは関係なく、互いの暮らしを支えるために人々はそれまでと変わらず行き来し兵士たちももう戦争は嫌だという想いから共に日々を暮らしていた。
第二次世界大戦後、冷戦の中で日本が南北に分断されていたらという枠組みの物語。ベトナムや朝鮮半島のような私たちが知っている悲惨な内戦という枠組みを舞台の外に設定しながらも、その枠組みの中に組み込まれていながら分裂しては暮らしてはいけないコミュニティを描きます。 外側では派手で悲惨な物語があることをにおわせつつ、そこからは隔絶されているはずでもゆっくりと影響を受け、外から見れば些細な諍いだけれど、この小さなコミュニティには壊滅的な影響になるのだ、という視座は鋭い。
暖かく見守っていたはずの軍人たちが突如銃をつきつけるという場面は少々唐突にすぎる気はしますが、ネットでみかけた、軍人二人が壊れかけたコミュニティを復活させるためのひと芝居だという感想、とりわけ「泣いた赤鬼」はぴったりくる形容で、この分断が壊滅を招くということをわかっている二人だからできること、というのは巧い着地点ではありますが、ここはもう少しわかりやすくてもいい感じはします。
チョコレートケーキは劇団名のわりに濃密な物語をわりと悲劇的に描く持ち味の劇団で、ワタシ、世間の高い評価の割に違和感が拭えない劇団の一つなのです。 が、今作はそこからは隔絶された、どこかのんびりとした素朴な人々を描くのは、表面的には劇団の持ち味に対して違和感ありつつも、そう分断せざるを得ない人々であったり、あるいはそれを守ろうとする人々であったりをベールの向こう側に見づらく描こうというのは、いわゆる有名な役者たちという確かな力を信じるからこそ打てた博打とも思えてきて、その心意気はよし。 もっとも、 目の前で起きること、身の回り5mで起きていることしか興味がないことは、昨今のヤンキー経済とかマイルドヤンキーとまでいわなくても、あたし自身だって、世界よりは目の前しか見えてなくなっているわけで偉そうなことはいえません。今作は、目の前の地に足が着いた生活の大切なことやある種のいとおしさを描くこと、それを通して 外側で起きている大きな出来事に想像力を働かせられてみられるかどうかがポイントになる気がしますが、あえてダイナミックレンジを狭くして描くというのは珍しい。
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