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2016.01.28

【芝居】「七つの秘密」AGAPE STORE

2016.1.24 14:00 [CoRich]

松尾貴史とG2のユニット復活の第二弾、AGAPE STORE (1, 2) 。ワタシは復活後は初見です。100分。24日まで紀伊國屋ホール、そのあと大阪。

オフィス。会社を辞めて出世をはかるために会社のもつ機密を持ち出そうと考えている男。経費を★した女は日々持ち物が豪華になっていく。不倫をしている男、犯罪を犯し整形した上に美人に生まれ変わり不倫している女、課長とゲイの関係にある男、会社の中で極秘裏にドラッグをつくっている男。それぞれが秘密を抱えている。 いわゆる芸能人を含むエンタメいっぱいの芝居。何も残らないエンタメ指向なのはここの持ち味だけれど、かつてのAGAPE STOREのような感覚でふらりと来てみれば、イケメン俳優ゆえかどうか、若い女性でいっぱいの客席。小さなオフィスの中で、少々強引に詰め込まれたそれぞれの秘密だったり、それを知ってしまった人の反応であったりをいくつも積み上げていきます。物語を編むというよりは細切れのコントを見るよう。大げさなリアクションや表情も、もうこの領域になればたいしたもの。全体をもう一つの「秘密」でラッピングするようにくるりとまとめ上げて見せるのは鮮やかなのです。

調子のいい事務を演じた池田純矢はテンポも良くてぐいぐいと引っ張る感じ。内気な経理を演じた宮﨑秋人はまじめさ・誠実さが勝る造型で、さわやか。酒癖の少々悪い営業を演じた東加奈子は豹変と眼福が嬉しいオヤジです。

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2016.01.27

【芝居】「俺の酒が呑めない」青年座

2016.1.23 16:00 [CoRich]

箱庭円舞曲の古川貴義が青年座に初めての書き下ろし。31日まで青年座劇場。130分。

仕込みで忙しい日々を送る酒蔵。東京から移住してきた夫婦の酒米も今年はできが良い。東京に出て映画監督になろうとしていて音信不通だった長男が突然戻ってくる。知り合いの大手居酒屋チェーンのバイヤーを連れ、専属契約をとることで実家を助けたい気持ちだったが、蔵を継いだ妹はそれを拒絶する。小さな蔵でなんとか従業員は食べて行けているし、客も定着し仕込んでいる酒の売り先は既に決まっていて、大手チェーンに出すほどの量の酒をつくることは出来ないと考えている。

ロビーから劇場の扉を入った瞬間に香る麹の香り、あるいは小さな酒屋らしくしつらえたタンクや仕込み表を目にしながら客席に。舞台もその延長線上にあって、事務室まわりを舞台にしつつ、舞台上方奥には、酒蔵のシンボルでもある杉玉がつられている奥行きのある舞台。いくつか目にしたことある酒蔵の雰囲気が呑兵衛にはうれしい。

人や家族のはなしでありながら、仕事の矜持といったものを併せ持った物語。作家が得意とするパターンではあるのだけれど、歳を重ねた役者たちが時にコミカルな寝技、時ににじみ出す圧巻の説得力で作り上げるのです。いくつもの軸を編み上げていく物語の奥行き。

たとえば、仕事を軸にした話。 必ずしも当主が酒を巧く造れるわけではなくて、外部の人間が杜氏の長であったりすること、過去の失敗と呼んでもらった恩義で味を守り続けること、あるいはそれに応えるような手厚い処遇ということであったり。それを重んじるあまり時に「赤字ではない」という収支で、後継者が育たないままでもなんとかしようとする無茶さでもあったりするのですが。

たとえば家族や地方こコミュニティのこと。地方のしかも造り酒屋にあって重要な後継者とか長男とかの問題。酒を体質が受け付けないなど理由があったにしても、出て行って音信不通になってしまった兄と、その結果進学をあきらめて後を継いで震災も越えてなんとかここまでこぎ着けた妹と。都会特有の軽さでどこか優先順位低く、自分には田舎というセーフティーネットがあるという感覚であれこれつまみ食いしたあげく困って戻ってきた兄の感覚と、 その場所で地道に仕事をして暮らしその場所が生活もある種の希望のすべてだという妹やまわりの人々の感覚と。都会からやってきた若い夫婦というのはまた違うベクトルだけれど、そこになじんで暮らしていける人がいるのだ、という希望を差し色のように。

そのまわりに、さまざまな立場の人々を象徴的に配置します。子供の頃の自分もずっと知っていていて、用があるんだかないんだかわからないのに毎日のように訪れる人が居たり、青春の甘酸っぱさが漂うようなあのころの知り合いが家族になってたりいまでもつながったりの感覚は、時にうざったいけれど濃密なコミュニティの姿。軽薄に見える兄だって、実家のことを考えてのこの行動。もしかしたら浅はかかもしれないけれど、東京の大資本がはいった大手チェーンへのつながりという「武器を持って」現れ。 ついこの前の舞台では引き締まったシリアスな外交官を演じた横堀悦夫が軽薄と云ってもいい兄を軽やかさに演じて振れ幅に驚き。 跡を継いだ妹を演じた小林さやかは、まっすぐで実直にというわりと得意な造形、酒への愛を感じるのは役柄以上な気がするのはまあ、気のせいか。 東京からのバイヤーを演じた椿真由美、巻き込まれ感満載というのはちょっと珍しい気はするけれど、凛として立ち続けていることの説得力と、しかし一ヶ月も、というどこか(元の同僚への)愛情を感じる繊細さも。農協のおばさんを演じた井上夏葉、びっくりするほどのかき回し力で、実は物語を推進させて、だらだら続きそうな流れを断ち切ったりとリズムを作る重要な位置をしっかりと。 恋心を抱く中年女性を演じた松熊つる松、じつに可愛らしく、ドジっ子が入るのもまた面白い。 ベテラン杜氏を演じた津嘉山正種のすごみ、確かな力はあっても過去の痛恨をバネに歩んできた推進力が、歩みを緩めるある種の哀しさ。老齢の父を演じた山野史人の優しい眼差しで子供たちを受け入れる度量。若い夫婦を演じた逢笠恵祐・小暮智美は時にバカップルっぽさも楽しく。福島県出身の二人というのも物語に対しての力になるのです。 若い杜氏を演じた前田聖太まっすぐな勘違いは輝くような若さを体現。夫を演じた若林久弥のじつは冷静な雰囲気はとりわけ後半の経理の話に説得力。

配役表を無償では配らないということに批判的なアタシですが、劇団サイトにはきちんと情報があるし、上質な当日パンフも300円というのも実は心意気で買ってしまうアタシです。抽選で商品が当たるくじ引きにも参加できて、外れたけれどこれも正月らしく楽しい。

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2016.01.25

【芝居】「THE GAME OF POLYAMORY LIFE」趣向

2016.1.21 19:30 [CoRich]

一人の女性と二人の男性が一緒に暮らし同意のうえ互いに愛しあって暮らしている。 その女性の教え子だった若い男は元の教師が好きでたまらないけれど会うことすら躊躇している。
女性のことを大学生の頃から好意を持っている女性の友人はこの独占できない恋愛が理解出来ない。
が、あとから来た女性は同居している男性のうちの一人と別に暮らしを始める。

関係している人々全てが同意の上で恋も性愛も含めて許容する概念、と理解しました(wikipedia)。フラットに誰とでも性的交渉を持つというのとはちょっと違っていて、決めたパートナーたちと互いに同意してはぐくむ愛の姿。核の三人のうちは平穏な日々だけれど、そこに更に二人が加わったことによる揺らぎは全体の構造を倒壊させるよう。

独占したい気持ちとの兼ね合いであったり、パートナーがほかに行ってしまっても残りのメンバーが関係性を変化させながらも維持できるかなど、要素(ひと)が二つでも多様で面倒で複雑でそれぞれなのに、それが三つ以上になったら相当に面倒なことになるということは容易に予想されます。が、そのあり方を選んだ人々というのが現実にいて、それを冷静に観察するかのように紡がれる物語なのです。

静かな翻訳劇のようにひたすらフラットな演出はアタシの印象では題材に対して真っ直ぐに向き合おうと考えたものだろうとおもいますが、少々長くも感じて。 当事者に近い立場の監修者が居るようだけれど、正直にいえば切実さが見えてこないもどかしさ。 もちろん殺人を起こさなければ殺人事件を描けないというわけではないのと同様、そういう嗜好であったり、体験しなければ描いていけないとは思いませんが 結果として、演出のせいなのか、作家の元々の本が描くタッチがそうなのか、どこか遠い場所から表面をなでるように描く感じであって、それはライトですてきでおしゃれな描き方だけれど。

こういう、やや一般的であるとは言いがたい嗜好を肯定的に描くのならば、もっともっと身を切るような気持ちで寄り添いたいと思うアタシなのです。 もしかしたら、アタシにはお洒落に過ぎていて、もっと身近な感じに感じられればいいだけかもしれないし、単にアタシがそういうことしたいだけじゃないか、ということも否定しきれないわけですが(情けない)。

ずいぶん昔に上演された「M.K.プロデュース「SWAP」(作 川上徹也   演出 杉本タダスケ  1998.1 近鉄小劇場・青山円形劇場)(2004年 再演)を唐突に思い出しました。ボノボをモデルに二組の夫婦が別の配偶者との性的関係を持つという話でぜんぜん違う話で、実は記憶もかなり曖昧なのに。んー。

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【芝居】「風桶」梅棒

2016.1.17 19:30 [CoRich]

105分。31日まで吉祥寺シアター。「OMG」と交互上演。

2316年の未来からやってきた男、この年にメジャーデビューしたバンドのライブを目撃しにやってきた。元の時代に戻ろうとしたときにバントの3人を巻き込んで1716年に跳んでしまう。バラバラになったバンドの三人は、町人、農民、芸妓のところでそれぞれの生活をするようになっていたが、再会したものの、タイムマシーンの半分を無くしていて元の時代に戻れない。不思議な力を操る侍の手下となったチンピラたちは、この4人を追ってくる。

本公演は初めて。冒頭以外にせりふはなく、ダンスともいえるけれど、当て振りとジェスチャーを組み合わせたような身体の動きにJポップから演歌までてんこ盛りの楽曲の融合。ミュージカルはどうしても歌い上げる感じで物語のすすみが遅く感じて苦手なアタシですが、あくまで楽曲のスピードのまま物語を乗せているこのユニットの手法は、シンプルな物語のおかげもあるけれど、そういうじれったさとは無縁で、初日にして満員立ち見という人気のほどもわかる気がします

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【ライブ】「38mmなぐりーず新春売りつくしライブ PもPも卒業!?ピンチはチャ~ンス♥なんだってばぁぁぁぁ!!!!」

2016.1.17 16:00 [CoRich]

佐山花織とプロデューサー・池田智哉 卒業にあわせたライブ。ライブカフェ弁天。130分。

小劇場の女優たちによるアイドルユニット、というのは色物っぽさは満載だけれど、ちゃんと続けてきていて。着実に曲を増やして思えば遠くへきたもんだという気持ち。曲はともかく女優であることとのバランスは難しいところだし、 三人というコンパクトなユニットになったけれど、確かに小劇場系を含むイベントで曲やMCが欲しいときの小回りが効くという意味で確実に存在感を積み上げてきているなという気はします。 ここからがなかなか難しい正念場だけれど、これだけの曲しかもわりと柔軟にいろんな人数で歌えるように振付のついている曲は確かに財産だろうと思うのです。

  1. 「KANGEKI☆おじさん」
  2. 「38mmなぐりーずのタコ紹介ソング」
  3. 「デートノゲネプロ」
  4. 「イツミノテイスト -It's mean(s) no taste-」
  5. 「うじけの秘密」
  6. 「脚立の上の牛若丸」
  7. メドレー(「親FU-KOOOOO!!」〜「すまいるだいなそー」〜「掟破りの♥I LOVE YOU」)
  8. 「風とともに」(新曲)
  9. 「私を劇場に連れてって。」
  10. 「あなたの好きなシェイクスピア」
  11. 「pink」
  12. 「みくのうた〜行きずりのトマトに大腿四頭筋が疼く」
  13. 「UIROURI」
  14. 「マフラー」
  15. 「打ち上げI miss you」
  16. 「風とともに」(新曲)
  17. 「制服ByeBye」

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【芝居】「つきまとう教室」深夜ガタンゴトン

2016.1.16 14:30 [CoRich]

17日まで王子小劇場。110分。

高校の頃は文芸部で小説を書き賞を取ったりはしたけれどちょっと浮いていた男、友達は多くてまじめといわれていた女は同級生なのに接点がなかった。10年が経ち、売れないままの男は持ち込んだ出版社で編集者になっていた女と再会して恋人となっている。男は最近高校生のころの同級生たちの夢をずっと見ている。人とうまく会話できなかったり、サッカーで活躍してたり、勉強ができて生徒会だったり、アバズレっぽかったり。そういえば、高校生の時も女は同級生たちの将来がぼんやり見えるような夢を見ていたという。
何かにずっといらだっている男、同級生は外資系と聞いたりして。カウンセリングに行きストレスが原因と診断される。男はなにが不満なのか、わからない。

同級生たちがどんどんきちんとした生活をするようになっているなか、何者にもなれないままでいる自分への不安と不満。そもそも売れたいのか認められたいのか、それとは関係なく書き続けると決めたのに。 若くはないけれど、ワタシもそういう感覚を最近持ちがちなので、そのもやもやをこんな歳になっても感じ続けていることの感覚はなんとなくわかる感じもあって。 羽ばたく気があるのかどうかわからない男を見守る立場の女。自分の現実とはまったく違うのに、どちらかというとこちらの役がするりと自分の中に入ってくるように感じるのは、ほぼ唯一の見慣れた役者だからか、それとも自分の中になにかあるのか。少々戸惑う気持ちも残ります。

演じた渡邉とかげは、普通の大人の女性をしっかりと。エキセントリックでもちんちくりんでもなく、の落ち着いた雰囲気。ダメ男を見守るみたいなポジションだからか、惚れてしまいそうなほどすてきに。 脇を固める役者たちも高校の頃のスクールカーストを背景に持ちながらも時間を重ねてそれぞれに変化していたりするのもなにか味わいがあります。とりわけ、風俗嬢を演じた榊菜津美のシーンもなかなかよくて、ちょっと深い。

クライマックス、立ち位置でまったく見えなくなってしまう席に座ったワタシ。ほんの少し立ち位置がずれるだけで全然違うのに惜しい。

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【芝居】「ファニー・ピープル」シンクロ少女

2016.1.15 19:30 [CoRich]

17日までスズナリ。130分。

街をでていた男は15年ぶりに戻ってくる。あのとき親友だった男はばかばかしい話をしながら楽しく連んでいる。いつも行っていた蕎麦屋は同級生の女が恋人の女性と一緒にタイ料理屋に変わっている。
高校を卒業した人々、双子の兄は働きながら妹を大学に通わせる。同級生は高校の時の年増の高校教師の家に夫や子供の不在をねらって通い続けている。

(性的な意味を持たない)ホモソーシャル、ということばがぴったりくるような笑ってばかりでつるむ男二人、あるいは心から仲の良い双子の男女であったり。ゆるく暮らす人々。それぞれの人々を優しい視線で描ているけれど、作家はその裏側にある辛さをしっかりと裏打ちしていて、それは後半に至りつらさを紛らわせるためのマリファナがこの人物を支えていたり、ということが哀しく、深い。

ふとした弾みでさまざまが露呈するけれど、ぼんやり判っていたとしてもそれを自身が話し始めるまでは訊ねたりしないという感覚。こういうバランスというか距離感の絶妙さにますます磨きのかかってきた作家。一緒に居たからこそ、あるいは一緒に居られなかった長い時間が醸してきたものをきちんと感じさせる描き方は、どこかかっこわるく、しかし気持ちを揺らすのです。

達観したような女のヤキモチの可愛らしさ、ほわんとしてインドに行って戻ってきた女のふわふわ。親友だったからこそ戻ってきたことのうれしさ、双子の妹が居なくなった穴を埋めるようになにもかも先送りにしてこの楽しい時間がいつまでも続いていればいいという感じ。

しかし、田中のり子が実にいい。物語の上ではあのころのバランスが急激にくずれるきっかけの一つという役割なのだけれど、それこそ「汚い棒」をもつ男をずるいという言葉でいう中盤など、 歳を重ねて、女として求められることを心底喜ぶのは実に俗物的に、じつに滑稽に描かれるけれど、なんかとてもよくわかる感じだし、ダメだとわかっているのに、そこにずぶずぶとはまりこんでしまってもなお嬉しいという気持ちを抑えきれないある種のエロさがほんとうに可愛らしい。

あるいは実は好意を持ち合う双子の男女。 欲望のまま突き進みそうになる男、それを拒絶する女、そこで手のひらを返したように何のために養ってるとおもってるんだと罵倒する男の身勝手さとその怖さ。女性だからこそ見えているんだろうなぁと思う風景。トールのフラペチーノがのみたい、という音感が絶妙で、二回目のそれは性行為思わせるのは考えすぎですかそうですか。

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2016.01.23

【芝居】「校舎、ナイトクルージング」ロロ

2016.1.13 19:30 [CoRich]

仕込み10分+本編60分という高校演劇の大会フォーマットに則って行うという触れ込みの「いつ高」シリーズの二回目。アタシは初見です。17日までSTスポット。

夜中の校舎に忍び込む生徒たち男女3人。写真に写った幽霊を探しに来ている。それとは別にこの校舎に居る人々。手慣れた感じで教室を廻っている女子生徒だったり。

夜中の教室、薄暗い中で始まる芝居。幽霊探しは想像の範囲だけれど、昼間は登校できないのに、夜中に教室に忍び込み、教室のあちこちに隠されたICレコーダーを聞いてその教室の出来事を残さず聞いて楽しんでいる女生徒。アイディアもさることながら、たくさんのレコーダーで一斉に再生すれば夜中の教室に昼休みが立ち上がるという感覚がおもしろい。

音を頼りにして場を想像する、というつながりかどうか、深夜ラジオに物語がつながるのも楽しく、ANN(ニッポン放送)だけでなくてJUNK(TBSラジオ)にも目を配り、普段は会うことのないリスナー同士が、同じ番組を共有するのはどこか秘密めいていて楽しい。

そこからもう一ひねり。教室ではおとなしく存在感がないままの生徒が実は自分でラジオ番組を作っていて、それを夜中の教室で聞いて葉書職人的に投稿してつながっている、おそらくは唯一のリスナーという感覚もいい。その男子生徒はなぜか何年も前に亡くなった「おばけちゃん」の初恋の人という一回りもすてき。どこか緩い「おばけちゃん」は一人にだけ見えないというのは妙に説得力があって巧い。

仕込みと本編の時間を高校演劇のフォーマットに従い、高校生の物語をするというやりかたは確かに発見なのです。もっとも、この小声だったりして細やかな物語が高校演劇大会で上演できるかというとまたちょっと違うんじゃないかとおもったりますが。

おばけちゃんを演じた北村恵はゆるくとぼけた雰囲気が可愛らしい。 夜中に居る女生徒を演じた望月綾乃は、挙動不審だけれど、気を許すとたくさん喋る造形が印象的。

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2016.01.22

【芝居】「ドアを開ければいつも」みそじん

2016.1.11 14:00 [CoRich]

女優四人による90分の芝居を同じ場所で季節の設定と役者を替えながら断続的に公演をする企画公演の冬バージョン。ワタシは劇団初見です。12日まで。築地市場にほど近い飲食店の二階、atelier.TORIYOU。このあともこの場所で季節と役者を替えながら上演を続けるようです。今回は長女・岩瀬晶子、次女・松本紀保、三女・大石ともこ、四女・吉田芽吹。

母親の七回忌を控え、次女の住む実家に集まる四姉妹。一緒に住んでいる父親は出張で明日戻ってくる。長女は結婚し家を離れて子供も居る。次女は結婚しないままこの実家に住んでいる。三女は父と反りが合わず美大に進んで家を出たが今はもう結婚しているがいろいろなものに手を出して今は染色に凝っている。末っ子は最近近所で一人暮らしを初めて会社勤めで忙しい日々を送っている。
それぞれの近況を聞き、それぞれに姉妹たちのことを心配し、横柄な父親のことに辟易していることを共有し、亡き母に想いを馳せる。

結婚や出産あるいは仕事、親、実家などロールモデルがさまざまに分化していく三十路前後の四姉妹を物語に据え、仲良は確かによくて互いを思いやる気持ちは十分あるけれど、人がよかれと思って云うことに内心いらついていたりをそれぞれに抱える女たち。それは決して悪意なんかじゃないけれど、姉妹であったとしてもそれぞれにズレて持っている自分の価値基準に照らし合わせて相手をそこにはめ込んで想い測れないこと。中盤以降に小出しにされるのは、次女が秘めていた想いや体験。

正直にいえば、秘めていた想いやそれを知った姉妹たちの激しく揺れる感情の発露が、四人が四人とも崩れるように大泣きするというのが少々醒めてしまって勿体なく感じるアタシです。それまでクールであった次女が泣くという効果や泣くことによって気持ちが一段溶け合うということをねらっていると想像するけれど、四人という人数の登場人物全員がとなるとやや過剰な感もあって、違うベクトルがほしいところ。

誰一人携帯を持たず、「国電」という単語が現れるということは30年近く前の時代を描いているという感じだけれど、特定の時代に依存することはなく普遍的な人物の描き方という感じ。四季を通じて上演を重ねてきたということは、その季節を感じさせるためには少し古い時代を想定して描いたほうが雰囲気もでるし描きやすいということかもしれませんが、それは成功していると想うのです。

狭い空間での上演、多くの人を適切に誘導するということのスキルがすごい。誰をどこで待たせて、何処に座らせて、ということを緻密にコントロールして、客席を「組み上げる」ように空間を作り出すというのはたいしたもの。なかなかできることではありません。

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2016.01.18

【芝居】「漂流劇 ひょっこりひょうたん島」Bunkamura+こまつ座

2016.1.10 13:00 [CoRich]

NHKの人形劇をベースに、130分で初めての舞台化。シアターコクーンに続き、まつもと市民芸術館で10日まで。大阪、福岡を経て東京凱旋公演も予定されています。

ピクニックに行った子供たち。火山が爆発し、島は漂流を始める。大統領や先生など大人たちには頼れない。二足歩行し人類を絶滅させた犬たちに捕らわれたりしながら旅を続ける彼ら。この島に隠されたお宝をねらった海賊が現れる。

という話をもともとの設定(wikipedia)を拾いながらでっち上げましたが、舞台のほうは実際のところ「漂流劇」よろしく断片的な話があちらこちらに跳び、時間軸も怪しい感じで演じられます。小さな物語の多くは、舞台上方に現れる煙とともに大音量の爆発音でぶつ切りにされ、あかるく滑稽な物語とは裏腹に、全体に陰鬱で不穏な空気がずっと重奏低音のように続きます。 舞台後半に至り、海賊も島の住人も懸命に探す「お宝」は、何度もその期待を裏切られ、人々は疲労困憊し絶望に打ちひしがれるよう。舞台に点在していた荷物や、あるいは死者の亡骸も爆発音とともに宙に浮いた幕切れ。

ネットですぐに検索にひっかかる「ひょっこりひょうたん島は最初のピクニックの時点の噴火で全員が死んでいて、その死後を描いている(wikipedia)」というのをNHK人形劇の原作者自身が後年語った話は初めてしったのだけれど、なるほどこの舞台を貫く不穏な空気の正体がわかるのです。もっともこの舞台に関して原作者のクレジットに井上ひさしが居ないことがもっとも不穏だったりしますが。

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【芝居】「新年工場見学会2016」五反田団

2016.1.3 19:00 [CoRich]

恒例の企画。早々に前売りが完売となったり、人気企画に育ってきました。正直、少々長いけれど楽しみ、休憩20分を含む220分。

ある星の物語、自覚のなかった男だが、サウナで左足につけていたロッカーキーをきっかけに誘われジェダイとして覚醒する。時にダークサイドに墜ちそうになりながらも、ロボットに反対するデモの参加者たちと協力 して姫を救い出す「スタア☆ウォーズのニセモノ」(五反田団)90分。
もう一度逢いたいがために火をつける女。獅子舞も。「OSHICHI」(紅申会)
ごっちんは小学三年生の女の子だが、たくましい筋肉を持ち野太い声で肌も黒い。好きな男の子は居るけれど親友の女の子と同じ男の子が好きとはいえないし、彼だって聞いてみれば親友のことが好きだという。泣いて家に戻ると一気に。「ごっちん娘」(ハイバイ)
「ザ・プーチンズの新春ライブ」
「ポリスキル」

「スタア〜」は同性愛をフォースや覚醒、ヘテロな愛をダークサイドと読み替えた枠組みは発想のワンアイディアのおもしろさ。それだけで十分な物語になりそうなのに、さらにロボット反対のデモやらロボットレストラン、主人公がストーカーもどきでレイアを追いかけてたり、母が女に戻るやらと実にたくさんの物語をぎゅうぎゅうと詰め込んでいて、これだけでひとつの公演かという濃密。

「OSHICHI」は八百屋お七を人形浄瑠璃風にきっちり見せる楽しさに、獅子舞が乱舞するのはこの公演の風物詩。

「〜娘」もまたワンアイディア。気を遣うつもりのある種の区別が、差別の萌芽だというシンプルなメッセージから、それが不満だという爆発までの前半の濃密さが実によいのです。筋肉隆々の後藤剛範を小学生の女の子、という出オチ感はあるけれど、それをきちんと物語にするのは確かな力。

「プーチンズ」は鬱になってる男だったり、やけにずれてるのに高いテンションとかがいつもの雰囲気の安心感。ナニコレという曲がやけにキャッチーで楽しい。

「ポリスキル」は職質を受けた男の不満を爆発されるいつものラストナンバー。それなりにちゃんと映像にでてたりしててもこれかよ、という雰囲気が見え隠れするのも楽しい。

お正月にみるものもないし、グダグダな芝居をちょっと観て、劇場で偶然あった友人たちと新年会と称して飲みに行きますか、というワークフローを続けているアタシとしては、終演が23時近いというのはおなかいっぱいを通り越して、これは来年からは作戦考えないとと思ってしまうところ。ワンアイディアだけで押し通しても十分おもしろいのにそこそこ長くなってしまうのは作家も役者も忙しすぎて切る暇が無いだけなんじゃないか、という気もします。

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2016.01.11

【芝居】「珈琲法要」ホエイ

2015.12.31 22:00
[CoRich]


2013年初演作ですが、アタシは初見です。大晦日の公演となる初日は、劇中で使用される口琴(ムックリ)の演奏やふるまい酒・蕎麦などの年越しイベント付きでした。6日までアゴラ劇場。

江戸後期、ロシアからの蝦夷守備のため斜里に送られた津軽藩士たち。想像を絶する寒さと栄養失調の中、手足が腫れ上がる病にかかり次々と亡くなっていく。

二つの布団、二人の津軽藩士、一人のアイヌ人で描かれる物語。現実の事件をベースにしつつも、wikipediaの記述によればタイトルにある珈琲の配給の時期はずれているようにも思います。もっとも「カラビナ」とか「津軽のリンゴ」などこの時代にはないものを嘘として丁寧に織り込んだりして現実に根ざしながらもフィクションとして描かれているのは巧い編集。

過酷な現場で働く人々、日々の楽しさはあっても、絶望の中でしかし生きていかなくてはならないと命じられた人々、しかもそれに従うという従順。現地人ですら冬は住まないという場所を知らないままに突き進んだ無策が生んだ悲劇、そのことに箝口令を引くこと。時代は進んでも、絶望的な時間がかかるアレが頭に思い浮かんだりするアタシです。

この時代は実はしっかりしていたな、というのは記録がちゃんと残っていて、時間がかかっても後世ではきちんと検証できるということ。振り返って、私たちの時代は果たしてどうなんだろう。そもそも紙じゃない怖さもあるし、隠したまま破棄しようとしている人々も多いし。

年越しイベントではきちんと暖かい蕎麦と、さまざまな酒の振る舞い。少しぐらいお金取ってもいいんじゃないかという充実度。井の頭線もJRも終夜運転だから帰りたいときに帰れるのもいいし、なんだったら夜明けぐらいまでいてもいい、という大盤振る舞いがうれしい。劇中使われているのと同じ楽器・ムックリは見た目とは裏腹に結構難しく、振動は何とかさせられても音まで行かない。amazonで売ってるっていうしちょっと買っちゃうか(笑)



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【芝居】「東京裁判」パラドックス定数

2015.12.31 15:00 [CoRich]

パラ定の人気作 (1, 2, 3, 4)の四演め。この芝居が生まれたpit北/区域の劇場クローズの千秋楽。秋の公演で別の劇場での上演でもびくともしない強度のある芝居だということもわかった安心と、それでもこの劇場であることは実に特別な体験なのだということが入り交じる感覚。

濃密な会話はそのまま、しかし役者も年齢を重ね、どこか大人の余裕というかいい加減さのようなものがいい塩梅になってきていて。例によって記憶力がザルなアタシなので、芝居がブラッシュアップされていることはきちんとはわからないけれども、話を知っていても、役者が同じでも何度観てもきちんとおもしろい体験ができるというのは実はすごいこと何じゃないか、と思うのです。劇場が変わっても上演できるということがわかったので、東京に限らずあちこちでやってほしい劇団のマスターピースだと思うのです。

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【芝居】「贋作・ウェストサイド物語 または 贋作・ローマの休日」劇団フライングステージ(gaku-GAY-kai2015)

2015.12.30 14:00 [CoRich]

年末恒例の芝居+レビューショー構成のお楽しみ企画。30日まで雑遊。休憩15分を含み200分。

靖国通りを挟んで歌舞伎町のホストと新宿二丁目のドラァグクイーンたちが対立している。ホストを辞めた男とドラアグクィーンのトップが許されない恋に落ちる。 日本を訪れている外国の王子は実はゲイだが、祖国では同性愛は厳罰であり、カミングアウトしていない。原発の売り込みをたくらむ勢力はそれを知り、その秘密を守ることと引き替えに原発の導入を進めたいと考える。
クリーンな町づくりを目指すという都知事は、ダンスコンテストで町を盛り上げることを提案し盛り上がる人々。その当日、出場できなくなったドラァグクイーンに代わって出場したのは、来日中の王子だった。
出場者の替え玉に気づいたホストたちが騒ぎ出す。 第一部 「贋作・ウェストサイド物語 または 贋作・ローマの休日〜新宿イーストサイド物語 または 2丁目の休日」
第二部

  1. 「ビアチカコラボ官能小説朗読」(水月モニカ)
  2. 「2015のジェストダンス」(西山水木)
  3. 「佐藤達のかみしばい〜僕の話をきいてください〜」(YouTube)(佐藤達)
  4. 「女優リーディング」(関根信一) 内田百閒「一本七勺」(御馳走帖)
  5. 「sayokoなりきりショウ リヴァイタル・クロカミ」(モイラ・ボルデリ)
  6. 「親孝行」(芳賀隆宏)
  7. 「LGBTAI〜その壁を越えて〜」(Tomone)
  8. 「ひとりのビッグショー」(ぶー子)
  9. 「今年もアタシ、第二部で何かやろうかねえ」(エスムラルダ)

新宿の歓楽街、女装男性やホストの対立という「ウエストサイドストーリー」的な街の物語をベースに、「ローマの休日」的なお姫様の話。その外側に実は同性愛者を歓迎していない保守的な為政者という描きます。ダンスも多くて、にぎやかさが楽しいけれど、政治家に対する作家の厳しい視線がきちんとあって、見た目とは裏腹に思いの外見応えのある一本になっています。その都知事を女性が演じ、熱海殺人事件風に造型したのも、いいテンションになっていて楽しくみられるのです。

第二部はもうジャンル問わずないろんな人々。アタシの観た二日目昼の回は「アイハラミホ。」や「中森夏奈子」の常連組の出演が無く、そういう意味では歌謡ショー的な賑やかさには欠ける感じではあって、お祭りな感じはややトーンダウン。その中でトリをつとめるエスムラルダの下品でしかし華やかで賑やかな感じは本当に年末だなぁと思うのです。 紙芝居は安定の一本、内田百閒はああ読んでみたいと思う一本。

2016.01.09

【芝居】「浮游」monophonic orchestra

2015.12.27 17:00 [CoRich]

2012年初演作を、男女を変え物語も大幅に変えての上演。90分。27日まで。キッドアイラックアートーホール。千秋楽の追加公演のおかげで時間があいました。

「先生」とよぶ親戚の男と暮らしている女。そこに海外から訪ねてくる友人の男は、女の以前の恋人と共通の知人だった。女の恋人は海外での生活のあと行方がわからなくなって7年が経つが、両親は住んでいた家も部屋もそのまま持ち続けている。天災により帰国できなくなった男はこの家で一緒に三人で暮らし始める。

体温が低そうな静かな会話劇。いなくなった男をまだ想う女、その女を想う訪ねてきた男の少々奇妙な三角関係にもうひと味、男女の関係ではないという男を加えて不思議な雰囲気で物語は進みます。静かな会話だけれど、深夜のラーメンとか少々からかうような関係があったりして、どこまでもフラットである種のリアルな人物のありようを造型しようとしているよう。

女が同居する理由が男を「監視すること」であったり、文字起こしが必要なほどの講演会の音声データであるとか、それぞれのピースは少々唐突な感じもするし、それが必ずしも物語に寄与するわけではなくて、あくまでフラットに会話を続ける人々を繊細に描くのです。小さい空間だからこそ生きるような話だな、と思うのです。

これをどう楽しむのかは、かなり人それぞれになりそうな気がします。アタシは女優を手がかりにみるけれど、芝居全体を優しくつつむ空気はきっと、この作家が、信頼できる役者と作り上げるミニマムな空間だなぁとも思うのです。

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2016.01.03

【芝居】「消失」ナイロン100℃

2015.12.27 13:00 [CoRich]

2004年初演 と同じキャストで27日まで本多劇場。

初演の印象と大きくは変わりません。当日座席引き替えの席が思いのほか前方で、この規模の劇場の芝居として圧巻の堪能。初演と同じ役者が10年以上経って、テレビでも人気のある役者が揃ってきていて、しかしこの濃密な芝居がやや八百屋の舞台できっちり演じられるのを観られるのが嬉しい。

本人以外の他者の意図によって人の記憶を改竄すること。それがたとえよかれと思ってやってるとしても怖いこと。今だって、機械をつないでガチャンとボタンを押してというほど明確にできる訳じゃないけれど、たとえば人々が目にするメディアをコントロールしたり、意図に反する言論を封じたりということでもきっと達成できるということがだんだんわかってきてる気がします。初演のころよりもそれはより切迫した現実感のあるものとして感じられるのはアタシだけかしらん。

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【芝居】「ライン(国境)の向こう」劇団チョコレートケーキ with バンダ・ラ・コンチャン

2015.12.26 19:00 [CoRich]

ポツダム宣言を受託しなかったことで日本は南北がそれぞれアメリカ・ソ連の影響下で別々の国となっていた。
二つの親戚同士の家族が暮らす小さな村落は国境により貫かれ国境警備の兵士が一人ずつ送られてきたが、内戦状態の国の状況とは関係なく、互いの暮らしを支えるために人々はそれまでと変わらず行き来し兵士たちももう戦争は嫌だという想いから共に日々を暮らしていた。

第二次世界大戦後、冷戦の中で日本が南北に分断されていたらという枠組みの物語。ベトナムや朝鮮半島のような私たちが知っている悲惨な内戦という枠組みを舞台の外に設定しながらも、その枠組みの中に組み込まれていながら分裂しては暮らしてはいけないコミュニティを描きます。 外側では派手で悲惨な物語があることをにおわせつつ、そこからは隔絶されているはずでもゆっくりと影響を受け、外から見れば些細な諍いだけれど、この小さなコミュニティには壊滅的な影響になるのだ、という視座は鋭い。

暖かく見守っていたはずの軍人たちが突如銃をつきつけるという場面は少々唐突にすぎる気はしますが、ネットでみかけた、軍人二人が壊れかけたコミュニティを復活させるためのひと芝居だという感想、とりわけ「泣いた赤鬼」はぴったりくる形容で、この分断が壊滅を招くということをわかっている二人だからできること、というのは巧い着地点ではありますが、ここはもう少しわかりやすくてもいい感じはします。

チョコレートケーキは劇団名のわりに濃密な物語をわりと悲劇的に描く持ち味の劇団で、ワタシ、世間の高い評価の割に違和感が拭えない劇団の一つなのです。 が、今作はそこからは隔絶された、どこかのんびりとした素朴な人々を描くのは、表面的には劇団の持ち味に対して違和感ありつつも、そう分断せざるを得ない人々であったり、あるいはそれを守ろうとする人々であったりをベールの向こう側に見づらく描こうというのは、いわゆる有名な役者たちという確かな力を信じるからこそ打てた博打とも思えてきて、その心意気はよし。 もっとも、 目の前で起きること、身の回り5mで起きていることしか興味がないことは、昨今のヤンキー経済とかマイルドヤンキーとまでいわなくても、あたし自身だって、世界よりは目の前しか見えてなくなっているわけで偉そうなことはいえません。今作は、目の前の地に足が着いた生活の大切なことやある種のいとおしさを描くこと、それを通して 外側で起きている大きな出来事に想像力を働かせられてみられるかどうかがポイントになる気がしますが、あえてダイナミックレンジを狭くして描くというのは珍しい。

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2016.01.01

【芝居】「MAN IN WOMAN」肯定座

2015.12.23 14:30
[CoRich]

90分。27日まで高円寺・明石スタジオ。

一軒家をシェアして住んでいる女たち。絵本作家だったり売れないモデルだったりCAだったり恋人が居たりいなかったりしている。富士山が噴火し一度は実家などに避難したものの、みな数ヶ月のうちに戻ってきてしまっている。それぞれは家事を分担しているが、買い物を分担する家主の女はぼおっとしていることが多く物忘れも増えていて周りはこの家をどうしていけばいいのか、考えはじめている。

独身である程度の年齢に達すると誰もが考えがちといえばあんまりだけれど(アタシが大好きな、ジェーン・スーにもそんなのがあるし、観劇の友達も一時期そんなこと云ってた)、同性ばかりのシェアハウス暮らし。何事かを成し遂げられそうだったり、そういう夢はまだまだ遠かったり。介護という言葉が見え隠れする老いも、シングルマザーでどう生きていくかということも、気心しれた仲間であれば乗り越えていけるかもしれない。さまざまな年代とロールモデルに目配りしながら進む物語。正直にいえば、気持ちはよくわかるしそうしたいなぁという気持ちはあるけれど、それはふわっとしたファンタジーだと思うあたしです。でも男に頼らずにしかし一人では心細いという感覚はよくわかるのです。

富士山噴火で一度は避難したけれどみんなが勝手に戻ってくるという、わりと大きな風呂敷を広げたわりに、中盤以降はほとんど物語に影響しません。正確に言えば登場人物の一人には影響しているのだけれど、かならずしもこれが理由でなくてもいいようにも思いますし、みんなの生活があまり制限されているようにも見えないし、日常生活が普通に送れているようでもあって、少々もったいない気もします。

アタシが座った位置では、テレビの画面がほぼ見えないじゃん、というのは、部屋のつくりの都合ということはわかりつつ、まあ大したことではありませんが。

この場を支えて物語を牽引したのは菊池美里の力の圧巻の安定感。ややがさつな女というポジションを演じた塩塚(ex.生方)和代はもっといけるはず。今作の驚きはアタシが今までみたことないメイクで登場した平田暁子、新しいキャラクタも見え隠れして、ちょっと嬉しい。

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