【芝居】「海の五線譜」青☆組
2015.12.12 18:30 [CoRich]
宮崎のあと14日までアトリエ春風舎。95分。
由比ヶ浜にほど近い家。夫婦と娘が住んでいる。妻は最近物忘れが多くなってきている。毎年みかんを送ってきていた宮崎の知人は大学の時の夫婦の先輩で妻の恋人だったが、親の面倒をみるために宮崎に戻っていた。数年前に亡くなり最近みかんを送ってくるのはその甥で、長女は礼状をきっかけに手紙をやりとりするようになっている。
オフホワイトを中心に淡い青をまぜたような舞台と衣装。老いた母親の若い頃と、現在の時間軸で進む物語。かつての恋人、別の人と結婚してからも残っている想い。おそらくは夫にも話せなくて隠していたこと。新婚旅行で腹痛になった夫を宿に残して、少々不倫めいた一日を過ごしたという新婚の妻というのは少々無理筋な流れな気はしますが、旅先でひとりの心細さとあわせて、裏切ったのか裏切らなかったのかのギリギリなところを狙った感じは、どこかファンタジーにもなっています。 その隠れていた事実を、母親のかつての恋人の甥と独身の長女の書簡という形で語る構造をベースにしながら、その長女の少々奥手な恋心を重ねて描くのも巧い。
作家自身の年齢(どころか私よりも)よりはあきらかに昔の世代を中心に、とりわけその世代の若い頃を描かせると巧い。少女から若い母親、老いて古希の時代を貫く一人の女性が物語の核。映像ではどうということはないけれど、一人の役者が演じるというのは演劇のおもしろさ。 演じた福寿奈央は若い大学生から老女まで、年齢のふれ幅をびっくりするほどスムーズにしかも鮮やかなコントラストで演じていて印象的。長女を演じた大西玲子・次女を演じた小瀧万梨子の姉妹も子供の頃のはしゃぎっぷり、 とりわけ海の向こうから自分を迎えに来るのだという待ち続ける少女の気持ち、大人になってもそのまま待ち続ける長女、一歩も二歩も先に進む次女という変化の残酷さ、女たちと時間の流れを描くもう一つの軸にになっています。
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